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【人事労務コラム】長時間労働の監督指導とは?令和7年度の結果と企業が注意すべきポイントを解説|岡山・倉敷

厚生労働省は、長時間労働が疑われる事業場に対して、労働基準監督署が令和7年度(令和7年4月~令和8年3月)に行った監督指導の結果を公表しました。

対象となった29,150事業場のうち、22,882事業場(78.5%)で何らかの法違反が確認され、そのうち11,228事業場(38.5%)で違法な時間外労働が確認されています。

大切なのは「怖い数字」として受け止めることではなく、自社の労働時間管理が今の状態で大丈夫か、この機会に確認することです。この記事では、

  • 何が「違反」として指摘されているのか
  • 「月80時間」という数字をどう理解すればよいか
  • 自社で今すぐ確認できることは何か

を、専門用語をできるだけかみくだきながら解説します。

厚生労働省が「令和7年度の長時間労働に関する監督指導結果」を公表

厚生労働省は、時間外労働(残業)や休日労働の時間が1か月あたり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間労働による過労死などで労災請求が行われた事業場などを対象に、労働基準監督署による重点的な監督指導を行っています。今回公表されたのは、その令和7年度(令和7年4月~令和8年3月)分の結果です。

監督指導の対象となった事業場数

令和7年度に監督指導が実施された事業場は、29,150事業場でした。このうち22,882事業場(78.5%)で、労働基準関係の法令違反が確認されています。

違法な時間外労働が確認された事業場

監督指導を受けた事業場のうち、11,228事業場(38.5%)で「違法な時間外労働」が確認され、是正勧告(法律違反を正すよう求める行政指導)が行われました。

「違法な時間外労働」とは、36協定(さぶろくきょうてい。会社が従業員に残業や休日労働をさせるために労使で結ぶ約束事)を結ばずに残業をさせていたり、36協定で決めた上限時間や、法律で定められた上限時間を超えて残業をさせていたりするケースを指します。

月80時間を超える時間外・休日労働が確認された事業場

違法な時間外労働があった11,228事業場のうち、実際に残業時間が最も長かった従業員の時間外・休日労働が、

  • 1か月80時間を超えていた事業場:4,991事業場(違法な時間外労働があった事業場のうち44.5%)
  • うち1か月100時間を超えていた事業場:2,842事業場(25.3%)
  • うち1か月150時間を超えていた事業場:554事業場(4.9%)
  • うち1か月200時間を超えていた事業場:111事業場(1.0%)

という結果でした。これらは監督指導の対象となった事業場の中での数字であり、日本全国の企業全体における割合ではない点に注意してください。

長時間労働の監督指導では何が確認される?

監督指導では、残業時間の長さだけでなく、いくつかの観点から労務管理の状況が確認されます。

違法な時間外・休日労働

36協定の内容(上限時間)と、実際の残業・休日労働の実績が一致しているかどうかが確認されます。36協定で定めた上限を超えていたり、そもそも36協定を結ばずに残業させていたりすると、法律違反となります。

労働時間の適正な把握

会社は、従業員一人ひとりの出勤・退勤時刻を、客観的な方法(タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間記録など)で確認・記録することが求められています。今回の結果では、4,045事業場(13.9%)で、労働時間の把握が不適正であるとして指導が行われました。

自己申告制(従業員自身が労働時間を申告する方法)を採用している場合は、申告内容とパソコンの使用記録などとの間に大きな食い違いがないか、定期的に確認することが求められます。

賃金不払残業

残業をさせたにもかかわらず、法律で決められた割増賃金(残業代)を支払っていない場合は「賃金不払残業」となります。今回は1,901事業場(6.5%)でこの違反が確認されました。

過重労働による健康障害防止措置

1か月80時間を超える時間外・休日労働をした従業員から申し出があった場合、会社は医師による面接指導を実施する義務があります。こうした健康障害防止のための措置が未実施だった事業場は5,919事業場(20.3%)でした。また、改善の指導を受けた事業場は12,811事業場(43.9%)にのぼります。

月80時間を超える残業がある場合に企業が確認したいこと

「月80時間」という数字だけが独り歩きしがちですが、80時間を超えたら自動的に違法になる、というものではありません。まずは、どのようなルールと関係しているのかを整理しておきましょう。

  • 時間外労働の上限規制:時間外労働は原則として月45時間・年360時間までとされています。臨時的な特別な事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)という上限があります。
  • 36協定の内容:36協定で定めた上限時間を超えて残業をさせている場合は、それ自体が法律違反となります。
  • 労働時間の把握:そもそも実際の労働時間を正確に把握できていなければ、上限を超えているかどうかも判断できません。
  • 健康確保の措置:月80時間を超える残業をした従業員については、医師による面接指導などの対応が必要になります。

つまり「月80時間」は、健康障害のリスクが高まる目安の一つであり、そこから先の対応(面接指導や労働時間の把握、36協定との整合性確認など)が適切にできているかどうかが、監督指導で重視されるポイントです。

長時間労働を防ぐために企業が確認したい5つのポイント

自社の労務管理を振り返る際は、次の5点を確認してみてください。

  1. 労働時間を客観的な方法で把握できているか:タイムカード、ICカード、パソコンのログなど、客観的な記録に基づいて始業・終業時刻を確認・記録できているか。
  2. 36協定の内容と実際の労働時間が一致しているか:36協定で定めた上限時間と、実際の残業・休日労働の実績にズレがないか。
  3. 時間外労働の上限規制を超えていないか:月45時間・年360時間、特別な事情がある場合でも年720時間などの上限を超えていないか。
  4. 割増賃金(残業代)が適切に支払われているか:自己申告と実態に食い違いがあり、支払いが不足していないか。
  5. 長時間労働者への健康確保措置ができているか:月80時間を超える残業をした従業員に対して、面接指導の申し出ができる仕組みが整っているか。

これらは、法令上の要件が細かく定められている部分もあるため、条件や具体的な運用方法については、必ず最新の一次資料(厚生労働省の資料や法令)を確認するか、専門家に相談することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1.月80時間の残業があると、必ず法律違反になりますか?

A.いいえ、月80時間を超えたこと自体が直ちに違法となるわけではありません。ただし、36協定で定めた上限を超えていないか、労働時間を適正に把握できているか、面接指導などの健康確保措置が取られているかは、別途確認が必要です。

Q2.令和7年度の監督指導結果は、どのくらいの事業場が対象になりましたか?

A.29,150事業場が対象となり、このうち22,882事業場(78.5%)で法令違反が確認されました。

Q3.36協定を結んでいれば、残業時間に上限はありませんか?

A.36協定を結んでいても、時間外労働には法律上の上限(原則月45時間・年360時間、臨時的な事情がある場合でも年720時間などの上限)があります。36協定の内容や運用が適切かどうかは、条件によって判断が異なるため、確認が必要です。

Q4.労働時間の自己申告制を採用していますが、問題ありますか?

A.自己申告制自体が問題というわけではありません。ただし、申告内容とパソコンの使用時間記録などとの間に大きな食い違いがないか、定期的に確認する仕組みが必要です。今回の監督指導でも、労働時間の把握が不適正として指導を受けた事業場がありました。

Q5.監督指導で是正勧告を受けた場合、どうすればよいですか?

A.指摘された内容に応じて、労働時間の把握方法の見直しや、割増賃金の遡及支払い、36協定の見直しなどの対応が必要になります。対応方法は事業場の状況によって異なるため、社会保険労務士など専門家に相談しながら進めることをおすすめします。


出典:厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果を公表します」(令和8年9月15日公表)

関連記事:残業月45時間の一律指導が見直しへ―2026年の労働時間政策はどう変わる?

長時間労働や労務管理に不安がある場合は社労士に相談を

今回の監督指導結果からもわかるように、長時間労働に関する法違反は、意図的なものだけでなく、労働時間の把握方法や36協定の運用方法にズレがあることで生じているケースも少なくありません。

「自社の残業時間の管理は大丈夫だろうか」「36協定の内容と実態が合っているか確認したい」など、長時間労働への対応や36協定、労働時間の管理、割増賃金などについて自社の対応に不安がある場合は、社会保険労務士への相談をご検討ください。

当事務所では、労働時間の管理、割増賃金などの管理体制を確認する「労務リスク診断」を無料で実施しています。

ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

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