【人事労務コラム】AIで就業規則を作る時代。社労士に依頼する価値とは?|岡山・倉敷

~文章を作るだけでは終わらない、就業規則の作成・見直し~
生成AIの普及により、就業規則や賃金規程などの社内規程を、AIを活用して作成・修正することも身近になりました。
条文のたたき台を作成したり、文章を整理したりするうえで、AIは便利なツールです。自社で規程の見直しに取り組む際にも、活用できる場面は多いでしょう。
では、AIを使って就業規則を作成できる時代に、社会保険労務士に依頼する価値はどこにあるのでしょうか。
今回は、実務上の事例をもとに、就業規則を作成・見直しする際に大切な視点をご紹介します。
1.一般論として正しい条文でも、自社に合っているとは限らない
ある企業で、既存の社内規程をもとに、制度に関する条文の見直しが行われたとします。
新たに作成された条文は、制度の一般的な説明としては不自然ではなく、文章としても整っています。
ところが、既存の賃金規程や制度の詳細を定めた規程と照らし合わせると、加入要件や金額の取扱いなどについて、実際の制度と異なる部分が見つかりました。
このような場合、条文だけを読めば問題がないように見えても、そのまま採用すると、社内のほかの規程との間に食い違いが生じたり、実際の運用とは異なる内容が規程に記載されたりするおそれがあります。
AIは、一般的な制度の説明や条文の構成を参考に、自然な文章を作成できます。
しかし、文章として整っていることと、その会社の制度に合っていることは別の問題です。
就業規則の作成・見直しでは、個々の条文だけでなく、関連規程や実際の制度との整合性まで確認することが重要です。
2.モデル就業規則を参考にするだけでは足りないことも
就業規則を作成する際には、厚生労働省のモデル就業規則を参考にすることができます。
一方、実際の企業の規程には、法令上必要な事項だけでなく、会社の実情や労務管理上のリスクを踏まえた独自の表現や規定が設けられている場合もあります。
たとえば、一般的なモデルとは異なる表現を採用している場合でも、そこには、想定されるトラブルへの対応や、会社の制度・運用に合わせるための意図があるかもしれません。
その背景を確認せずに、一般的な表現に置き換えてしまえば、条文の意味が変わったり、意図していたリスク対策が損なわれたりする可能性があります。
もちろん、独自の表現であればよいというわけではありません。法令への適合性を確認したうえで、その規定が目的に照らして適切かどうかを検討する必要があります。
大切なのは、モデル就業規則との違いだけで判断するのではなく、なぜその条文が設けられているのか、どのような目的があるのかまで確認することです。
3.規程を作成した背景や変更の経緯も、重要な情報
就業規則や賃金規程は、一度作成したら終わりではありません。法改正や会社の制度変更、労務管理上の課題などに応じて、見直しが必要になります。
その際、条文だけでなく、作成・変更した理由や検討の経緯が記録されていれば、将来の見直しに役立ちます。
たとえば、次のような情報を残しておくことが考えられます。
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その条文を設けた目的
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一般的なモデルとは異なる表現を採用した理由
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過去の見直しで検討した内容や変更の経緯
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将来、条文を変更する際に確認すべき事項
こうした情報は、担当者が変わった場合にも、規程の意図を引き継ぐための手がかりになります。
また、AIを活用して規程を見直す際にも、条文だけでなく、その背景や変更履歴を併せて読み込ませることで、会社独自の事情を踏まえた検討がしやすくなります。
AIに何を作成させるかだけでなく、適切な判断に必要な情報を、どのように整理して残しておくかという視点も重要です。
4.社労士に依頼する価値は、会社ごとの事情を踏まえた検討にある
AIを活用すれば、一般的な条文の作成や文章の整理を効率化できます。しかし、実際の就業規則には、会社ごとの制度、運用、労務管理上の課題など、個別の事情が関わります。
社会保険労務士に就業規則の作成・見直しを依頼する価値は、条文を作成することだけにあるのではありません。
会社の状況を踏まえて必要な規定を検討すること。関連する規程や実際の運用との整合性を確認すること。法令への適合性を確認しながら、想定されるリスクにも目を向けること。そして、なぜその内容にしたのかという判断の背景を、将来の見直しにもつなげていくこと。
こうした検討を通じて、会社の実情に合った就業規則を整えていくことが、専門家に依頼する意義の一つです。
AIなどの便利なツールを活用することと、専門家の知見を活用することは、対立するものではありません。
それぞれの強みを生かしながら、自社に合った規程を整備していくことが大切です。
まとめ
AIを活用することで、就業規則の作成や見直しに取り組みやすくなりました。一方で、規程の適切さは、文章の完成度だけでは判断できません。
法令への適合性、関連規程との整合性、実際の運用、そして会社ごとの事情や規定の背景まで踏まえて検討することが重要です。
就業規則の新規作成や見直しをご検討の際は、社会保険労務士への相談もご活用ください。
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