2019年の法施行から5年が経過した「同一労働同一賃金」制度ですが、先日、厚生労働省の労働政策審議会でガイドラインの見直し案が提示されました。 企業の実務対応には一定の影響・変更が想定されます。現時点では「案提示」段階ですが、方向性として以下のような対応が必要になる可能性があります。 1. 待遇差の合理性判断の明確化 背景:これまで「正社員と非正規
賞与は、従業員のモチベーション向上や採用力の強化に役立つ一方で、経営者にとっては本来「任意の支出」であり、 法律上は支給の有無や金額を自由に決定できます。ただし、一度制度化すると「期待権」が発生し、減額・廃止が難しくなる点には注意が必要です。 本コラムでは、賞与の法的性質・期待権・就業規則・相場・社会保険料・助成金要件・月給増との比較までを、経営者の意思決定に役立つ形で整理します。 1
賢い経営者はもう始めている “会社のお金を安全に個人資産へ付け替える”という発想── なぜ、いま企業型DCなのか?── ① 経営者のための「資金付け替え」という考え方 経営者にとって、会社の財務と自分の生活は切っても切り離せません。業績の波や万が一の事故・病気、さらには事業が立ちゆかなくなったとき…会社のお金と個人のお金が混ざりやすいからこそ、 会社の資金を合法的に“個人資
経営者・管理者にとって、社員の評価や問題行動への対応は日常業務の中でも特に難しいものです。感情的な判断や先入観に頼ると、トラブルが大きくなった際に会社が不利になるリスクがあります。ここで役立つのが、心理学の 「メタ認知」 と 「確証バイアス」 という考え方です。 1. メタ認知と確証バイアスとは? メタ認知 簡単に言うと 「自分の考えや感情、判断の
令和7年11月19日付の官報にて、通勤手当の非課税限度額が引き上げられることが正式決定しました。 今回の改定では、2025年4月にさかのぼって非課税扱いが可能となるため、給与計算や年末調整での対応が必須です。 1.非課税限度額引き上げの概要 従業員が受け取る通勤手当の非課税枠が拡大 過去に課税扱いされた通勤手当も、改正後の非課税限度額で精算可能
経営者の皆さま、企業型確定拠出年金(企業型DC)のメリットはご存知でしょうか? 以前は企業型DCといえば銀行系の大企業向けプランが中心で、ある程度の従業員人数が必要でした。しかし現在は、役員1人からでも加入可能で、希望者が自由に利用できる制度設計が可能になり、中小企業にも導入の流れが広がっています。 企業型DCは、会社のお金で経営者の老後資金を積み立てられる制度です。拠出金は会社の損金扱い
多くの企業で導入されている「定年後再雇用制度」。一般的には、60歳の定年後に1年ごとの有期契約で雇用を継続する形がとられています。 しかし近年、企業から増えている相談が、次のようなものです。 「定年後再雇用者から無期転換の申込みを受けたが、対応方法が分からない」 実は、定年後再雇用であっても、条件を満たせば“無期転換申込権”が発生します。制度の理解が不十分なまま運用すると、企
「期間の定めがある契約だけど、特にトラブルもないし、自動更新にしておこう。」そんな契約書、思い当たる企業も多いのではないでしょうか。 実はこの「自動更新」という一文、法律上はすぐに違法というわけではありませんが、実務的にはリスクを抱えた表現です。最近は、行政の指導でもこの点が厳しく見られるようになっています。 ※ ※ ※ 1.「自動更新」契約のどこが問題なのか? 有期雇
健康保険の被扶養者認定では、これまで対象者の過去の収入や現時点の収入、将来の収入見込みを踏まえ、時間外手当などの所定外賃金も含めて年間収入を算定していました。今回、通達およびQ&Aが発出され、扶養認定に関しての運用が整理されましたので、その内容をまとめています。 * * * 2026年4月1日以降は、年間収入を「労働契約の内容に基づく賃金」で判定することが明確化されます。 1
近年、「老後資金が2,000万円不足する」という報道を目にすることが増えています。しかし実際に自分はいくら年金を受け取れるのか、正確に把握している方は少ないのではないでしょうか。 将来の生活設計を考える第一歩として、まずは ご自身の年金受給見込額を確認すること が重要です。 老後資金が2,000万円足りない!? 2019年に“老後資金2,000万円問題”という言葉が話題になりました。