【人事労務コラム】最低賃金の答申状況から読み取る、今後の動向と企業への影響|社労士 岡山・倉敷
2025年度の最低賃金改定に向け、全国各地で答申が出揃いつつあります。政府は2020年代後半を目途に、全国加重平均で1500円を目指す方針を示しています。この目標に向けた地域ごとの動向を整理すると、いくつか注目すべき点が見えてきます。
まず、発効日についてです。岡山県は2025年12月発効となる一方で、群馬県は2026年3月1日、秋田県は2026年3月31日と、地域によって適用開始時期が異なっています。このような差は、地方の経済状況や審議の進捗によるものであり、必ずしも単なる行政手続きの遅れではありません。
Cランクと呼ばれる、全国平均を下回る県では、引上げ幅が大幅には難しい状況が続きます。しかし、今回の答申を見ると、こうした県でも一定の引上げが行われており、地域としての対応努力がうかがえます。一方で、発効日が遅めに設定されるケースが多いことも事実であり、引上げの段階的な実施や審議の慎重さと関連していると考えられます。つまり、発効日の遅さは「引上げ幅を現実的に調整するための措置」とも見なせるでしょう。
今回の答申状況からは、今後数年間にわたり、地域ごとの引上げペースや発効時期の差が継続することが読み取れます。企業側は、給与制度や人件費計画への影響を事前に把握することが重要です。特に複数県で事業を展開する場合には、発効日や引上げ幅の差を踏まえた調整が求められます。
2025年9月5日時点の答申状況
厚生労働省から示された改定の目安額はA・Bランクが63円、Cランクが64円でした。
Cランク県を中心に大幅な引上げが見込まれます。
目安 | 都道府県 | 改訂前 | 改訂後 | 引上額 | 発効日 | 目安 | 都道府県 | 改訂前 | 改訂後 | 引上額 | 発効日 |
A | 東京 | 1163 | 1226 | 63 | 2025年10月3日 | B | 福井 | 984 | 1053 | 69 | 2025年10月8日 |
A | 神奈川 | 1162 | 1225 | 63 | 2025年10月4日 | B | 岡山 | 982 | 1047 | 65 | 2025年12月1日 |
A | 大阪 | 1114 | 1177 | 63 | 2025年10月16日 | B | 和歌山 | 980 | 1045 | 65 | 2025年11月1日 |
A | 埼玉 | 1078 | 1141 | 63 | 2025年11月1日 | B | 徳島 | 980 | 1046 | 66 | 2026年1月1日 |
A | 愛知 | 1077 | 1140 | 63 | 2025年10月18日 | B | 山口 | 979 | 1043 | 64 | 2025年10月16日 |
A | 千葉 | 1076 | 1140 | 64 | 2025年10月3日 | B | 宮城 | 973 | 1038 | 65 | 2025年10月4日 |
B | 京都 | 1058 | 1122 | 64 | 2025年11月21日 | B | 香川 | 970 | 1036 | 66 | 2025年10月18日 |
B | 兵庫 | 1052 | 1116 | 64 | 2025年10月4日 | B | 島根 | 962 | 1033 | 71 | 2025年11月17日 |
B | 静岡 | 1034 | 1097 | 63 | 2025年11月1日 | B | 愛媛 | 956 | 1033 | 77 | 2025年12月1日 |
B | 三重 | 1023 | 1087 | 64 | 2025年11月21日 | B | 福島 | 955 | |||
B | 広島 | 1020 | 1085 | 65 | 2025年11月1日 | C | 鳥取 | 957 | 1030 | 73 | 2025年10月4日 |
B | 滋賀 | 1017 | 1080 | 63 | 2025年10月5日 | C | 佐賀 | 956 | |||
B | 北海道 | 1010 | 1075 | 65 | 2025年10月4日 | C | 山形 | 955 | |||
B | 茨城 | 1005 | 1074 | 69 | 2025年10月12日 | C | 大分 | 954 | |||
B | 栃木 | 1004 | 1068 | 64 | 2025年10月1日 | C | 青森 | 953 | |||
B | 岐阜 | 1001 | 1065 | 64 | 2025年10月18日 | C | 長崎 | 953 | |||
B | 富山 | 998 | 1062 | 64 | 2025年10月12日 | C | 鹿児島 | 953 | 1026 | 73 | 2025年11月1日 |
B | 長野 | 998 | 1061 | 63 | 2025年10月3日 | C | 岩手 | 952 | 1031 | 79 | 2025年12月1日 |
B | 福岡 | 992 | 1057 | 65 | 2025年11月16日 | C | 高知 | 952 | |||
B | 山梨 | 988 | 1052 | 64 | 2025年12月1日 | C | 熊本 | 952 | |||
B | 奈良 | 986 | 1051 | 65 | 2025年11月16日 | C | 宮崎 | 952 | 1023 | 71 | 2025年11月16日 |
B | 群馬 | 985 | 1063 | 78 | 2026年3月1日 | C | 沖縄 | 952 | 1023 | 71 | 2025年12月1日 |
B | 新潟 | 985 | 1050 | 65 | 2025年10月2日 | C | 秋田 | 951 | 1031 | 80 | 2025年3月31日 |
B | 石川 | 984 | 1054 | 70 | 2025年10月8日 |
参考
厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_60788.html
まとめ(経営者向け)
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最低賃金の発効日は県ごとに異なるため、事業所所在地の最新情報を確認すること
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Cランクの県では引上げ幅は厳しいが、今回の答申では一定の引上げが行われており、発効日の遅さは段階的な対応の一環と理解できる
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全国平均1500円という政府目標に向け、今後数年間で地域差を縮める動きが継続すると予想される
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給与制度や人件費計画に影響が及ぶため、経営者は発効日や引上げ幅の差を踏まえた準備が必要
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