【人事労務コラム】2027年~段階施行・短時間労働者の社会保険適用拡大|社労士 岡山・倉敷

~“106万円の壁”はどう変わる?企業に求められる対応とは~
年金制度改正の中でも、企業実務への影響が最も大きいのが「短時間労働者の社会保険適用拡大」です 。
パート・アルバイトを雇用している企業にとっては、ほぼ確実に対応が必要になる重要な改正となります。
社会保険の加入対象の拡大①
短時間労働者の加入要件の見直し
①賃金要件の撤廃(いわゆる“106万円の壁”)
現在は「月額8.8万円以上(年収約106万円相当)」が基準ですが 、最低賃金の引き上げ状況を見極め、公布から3年以内に撤廃される予定です 。
👉 「週20時間以上」働く人は、企業規模や収入に関係なく、原則として社会保険の加入対象へ
※ただし、学生は引き続き対象外です 。
②企業規模要件の撤廃(段階的)
現在は「従業員51人以上の企業」が対象ですが 、これが10年かけて段階的に引き下げられ、最終的には企業規模に関係なく適用されます 。
段階的に対象を拡大し、2035年10月には10人以下の企業にも適用(完全撤廃)となる予定です。
2027年10月~:36人以上の企業
2029年10月~:21人以上の企業
2032年10月~:11人以上の企業
2035年10月~:10人以下の企業
社会保険の加入対象の拡大②
個人事業所の適用対象の拡大
👉 【要注意】飲食店などの「個人事業所」も対象に!
これまで適用外だった「常時5人以上を雇用する個人事業所(飲食サービス業、宿泊業、農業など)」も、2029年10月から新たに加入対象となります 。
※ただし、2029年10月時点で既に存在している事業所は、当分の間対象外となる経過措置が設けられます 。

なぜこの改正が行われるのか?
背景には以下の狙いがあります。
- 働き方に中立的な制度にし、ライフスタイルに合わせて働き方を選びやすくするため
- 就業調整(働き控え)を減らし、事業所の人材確保につなげるため
- 働くことで手厚い保障(将来の年金増額など)を受けられる方を増やすため
会社への影響
この改正は、企業側にとってインパクト大です。
社会保険料の負担増
労使折半のため、新たに加入する従業員の分だけ法定福利費(会社負担)が増加します。
手続き・管理の負担増
加入対象者の把握と手続きの手間が増えます。
人件費設計の見直し
シフト、時給、雇用契約の条件などを根本から見直す必要が出てきます。
実務で特に注意すべきポイント
「週20時間」の判断は実態ベース
契約上は20時間未満でも、実態として継続して20時間以上働いている場合は加入対象になる可能性があります。
「2ヶ月以内契約」でも対象になるケースあり
短期契約でも、更新が見込まれる場合は最初から加入対象になります。
従業員数のカウント方法に注意
企業規模の判定は「常勤の従業員数(現在の厚生年金加入者数)」で判断されます 。
パート全員の頭数ではない点に注意が必要です。
企業として今からやるべきこと
段階的施行とはいえ、準備は早い方が圧倒的に有利です。
対象者のシミュレーション
週20時間以上働いているパート従業員が何人いるか洗い出す。
人件費インパクトの試算
社会保険料の会社負担増が年間でいくらになるかコストを見える化する。
社内説明の準備
「手取りが減るのでは」という不安に対し、手厚い保障や将来の年金増額といったメリットを説明できるようにする 。
事業主への支援
負担増に悩む企業や従業員に向けた、国の支援策も用意されています!
👉 従業員の手取り減を防ぐ「保険料調整」
新たに加入対象となる短時間労働者に対し、3年間、保険料負担を国の定める割合に軽減できる特例措置があります 。
従業員の手取り増加分を会社が一旦負担しますが、その全額が制度全体から事業主に還付(支援)されます 。
👉 事業主への助成金
労働時間の延長や賃上げを通じて労働者の収入を増加させる事業主に対し、「キャリアアップ助成金 短時間労働者労働時間延長支援コース(1人当たり最大75万円)」による支援もあります。
まとめ
今回の改正を一言でいうと「パートでも社会保険加入が当たり前の時代へ」です。
コスト増は避けられませんが、見方を変えれば「社会保険完備」を打ち出すことで、人材確保にはプラスに働きます。
制度改正は「いつか対応」ではなく、“気づいた企業から準備が進む”のが実務のリアルです。
今のうちに、自社への影響を一度整理しておきましょう。






