【人事労務コラム】2027年施行「育成就労制度」で企業に求められる労務管理とは?|社労士 岡山・倉敷

2027年4月1日、新しい外国人雇用の制度(育成就労制度)が始まります。
育成就労制度とは、現在の技能実習制度に代わる新たな外国人雇用制度です。
ポイントはたった一つです。
外国人雇用は「採用できるか」から「辞めずに働いてもらえるか」の時代へ変わる。
これまでは「監理団体に任せておけば大丈夫」という側面がありました。しかし新制度では、外国人が条件の良い会社へ転職できる仕組みが整備されます。
つまり、職場環境が悪い会社からは人が離れ、整っている会社に人が集まる時代になります。
この記事では「自社で何をすればよいか」に絞ってお伝えします。
目次
1. 何が変わるのか?3分でわかる育成就労制度
現在の「技能実習制度」は、長年にわたり労働環境の問題が指摘されてきました。そのため2024年6月に法律が改正され、2027年4月1日から「育成就労制度」に移行します。
経営者が押さえるべき変更点は、主に2つです。
① 目的が変わる:「実習」から「人材育成・確保」へ
これまでの技能実習制度は、建前上「日本の技術を母国へ持ち帰る」という制度でした。新しい育成就労制度は、「外国人材を長く育てて会社の戦力にする」ことを目的としています。
② 転職(転籍)ができるようになる
技能実習制度では、外国人は原則として転職できませんでした。育成就労制度では、一定の条件(同じ業種内・一定期間の勤務実績など)を満たせば本人の意思で転職できるようになります。
これが経営者にとって最大の影響です。「転職されたら困る」と感じた方こそ、職場環境を見直すタイミングです。
2. 実際にあった相談事例:うちの会社は大丈夫?
事例:外国人スタッフが会社になじめず、離職が心配に
食品加工業のB社では、特定技能の外国人スタッフ3名が採用後しばらくすると、日本人スタッフと会話がなくなり、休憩中も孤立するようになりました。「このまま辞めてしまうのでは」という相談でした。
原因を確認すると、作業マニュアルや安全のルールがすべて日本語だけで書かれており、内容が十分に伝わっていないことがわかりました。ミスをしても理由を説明できず、ただ注意されるだけの状況が続いていたのです。
対応として、やさしい日本語とイラストを組み合わせた作業マニュアルを作成し、日本人スタッフにも「外国人と一緒に働くためのコミュニケーション研修」を実施。3ヶ月後には職場内の会話が増え、定着につながりました。
費用の一部は助成金(最大80万円)で賄うことができました。
💡 「うちは監理団体がいるから大丈夫」と思っていても、日常の職場管理は会社側の責任です。
3. 今すぐ確認すべき4つのチェックポイント
以下の4項目を確認してください。1つでも「できていない」があれば、早めに対応することをお勧めします。
✅ チェック① 在留カードの期限を会社側でも把握しているか
在留期限の管理を監理団体だけに任せている場合、更新漏れが起きることがあります。期限が切れた状態で働かせてしまうと、会社側も法的に問われるリスクがあります。
対応: 外国人社員の名前・在留資格・期限を一覧にした管理表を社内で持つ。
✅ チェック② 残業・給与・休暇のルールが「伝わる形」で説明されているか
「説明した」でも、外国人スタッフに伝わっていないケースは非常に多いです。特に残業代の計算・有給の取り方・退職の手続きは誤解が起きやすいポイントです。
対応: やさしい日本語・母国語・イラストを活用した説明資料を用意する。
✅ チェック③ 長時間労働が「見えない」状態になっていないか
外国人スタッフは「断りにくい」「相談しづらい」と感じていることが多く、残業やサービス残業が表面化しにくい傾向があります。勤怠記録を定期的に確認する習慣が重要です。
対応: 月の残業時間・有給取得状況を定期的にチェックする。
✅ チェック④ 困ったときに相談できる人・場所があるか
「誰に相談すればいいかわからない」という状況が、離職につながる大きな原因の一つです。窓口は担当者を明示するだけでも効果があります。
対応: 外国人スタッフが相談しやすい窓口担当者を決め、周知する。
4. 助成金で整備費用を賄える場合があります
職場環境の整備にかかる費用は、「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」(厚生労働省)で一部助成が受けられる場合があります。
- 助成額: 最大80万円(整備内容により異なります)
- 対象の例: 作業マニュアルの多言語化・やさしい日本語化、通訳費用、多言語標識の設置など
- 注意点: 事前に「就労環境整備計画」を提出・認定を受けてから実施することが条件です。先にやってから申請しても対象外になるため、順番に気をつけてください。
申請手続きや計画書の作成は、当事務所でサポートしております。
5. よくある質問(FAQ)
Q1. 育成就労制度は、今いる技能実習生にも適用されますか?
A. 2027年3月31日までに入国し、施行日(2027年4月1日)時点でまだ技能実習を行っている方については、引き続き現在の制度のルールが適用されます(経過措置)。2027年4月1日以降に新たに来日する外国人から、育成就労制度が適用されます。
Q2. 外国人が自由に転職できるようになるのですか?
A. 「自由に」ではなく、「一定の条件を満たした場合に」転職が認められる仕組みです。同じ業種内での転籍・一定期間の勤務実績・技能・日本語要件を満たすことなどが条件となります。ただし、現行の技能実習制度と比べると転職のハードルは大幅に下がります。
Q3. 今、取引している監理団体はそのまま使えますか?
A. 現在の監理団体は、育成就労制度では「監理支援機関」として新たに許可を取り直す必要があります。2026年4月15日から申請受付が始まっています。取引先の監理団体が申請を進めているかどうか、早めに確認しておくことをお勧めします。
Q4. 助成金はどんな会社でも使えますか?
A. 雇用保険に加入していて、外国人労働者を雇用している事業主であれば、基本的に申請の対象となります。ただし、事前に計画を提出して認定を受けてからでないと、費用が助成対象になりません。要件の詳細は事務所にご相談ください。
まとめ:今から動き始めることが「選ばれる会社」への第一歩
2027年4月の育成就労制度の施行まで、残り約1年を切っています。
「外国人が来てくれる会社」ではなく、「外国人が安心して長く働ける会社」が選ばれる時代になります。そのために今すぐできることは、前述の4つのチェックポイントを確認することから始まります。
当事務所では、外国人雇用に関する以下のご相談を承っております。
- 外国人雇用時の労務チェック
- 就業規則・労働条件通知書の整備
- 労務管理体制の見直し
- ハラスメント防止体制の整備
- 助成金活用のサポート
お気軽にご相談ください。
本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。制度の詳細・最新情報については、厚生労働省・出入国在留管理庁の公式発表をご確認ください。






