【人事労務コラム】2026年度最低賃金改定へ!中小企業が今すぐ確認すべき給与見直しポイントと助成金活用|社労士 岡山・倉敷

【結論】2026年度の最低賃金はまだ未確定。中小企業は今から基本給の点検を始めましょう
2026年度(令和8年度)の最低賃金は、2026年6月30日時点ではまだ決定していません。中央最低賃金審議会では2026年6月26日に目安額の検討が始まったばかりの段階です。
ただし、過去の審議の流れを踏まえると、今年は例年通り10月頃に発効(新しい金額が適用される)となる可能性が高いと考えられています。前年度は発効時期が11月以降にずれ込む地域が多くありましたが、今年度は早期発効に戻る方向性が示されています。
そこで重要なのが「金額が決まってから動く」のではなく、「今のうちに自社の給与体系を点検しておく」という考え方です。具体的には、以下の3点を早めに確認しておくことで、確実な対応とスムーズな準備につながります。
- 自社の基本給が最低賃金のチェック対象になることを理解する
- パート・派遣社員を含めた給与の確認方法を整理する
- 賃上げの負担を軽減できる「業務改善助成金」の活用を検討する(※活用できる場合があります)
それでは、それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
なぜ今年は「10月発効」に戻る可能性が高いのか?2026年6月時点の審議状況
最低賃金は、都道府県ごとに毎年見直される「賃金の最低ライン」です。事業者は、雇用するすべての従業員(正社員・パート・アルバイト・派遣社員を含む)に対して、この金額以上の賃金を支払う義務があります。
2026年6月26日、中央最低賃金審議会において令和8年度の目安額についての審議が開始されました。現時点では、具体的な引上げ額(〇〇円といった数字)はまだ示されていません。今後、目安額の答申、その後の各都道府県での審議を経て、最終的な金額が決定する流れとなります。
また、発効時期(新しい最低賃金が適用される日)についても、これまでの審議では「発効日を、大幅な引上げ額を確保するための交渉材料とするべきではない」という考え方が示されており、例年通り10月頃の早期発効を基本とする方向性が確認されています。前年度の「発効が遅れる」という前提でスケジュールを組んでしまうと、対応が後手に回るリスクがありますので注意が必要です。
どの企業が要注意?パート・固定残業代・派遣社員を雇用している会社が確認すべき理由
最低賃金の改定は、すべての企業に関わる話ですが、特に次のような従業員を雇用している企業は注意が必要です。
- 時給制・日給制のパート、アルバイトを雇用している企業
- 固定残業代を導入している企業
- 月給制で、給与水準が最低賃金に近い従業員がいる企業
- 派遣社員を受け入れている企業(派遣先企業)
特に月給制や固定残業代を導入している企業では、最低賃金の計算方法を誤解しやすいため、次の章で詳しく解説します。
何を基準に比較する?基本給・固定残業代・派遣社員の最低賃金チェック方法
【月給制・固定残業代ありの企業】比較対象は基本給部分のみ
最低賃金のチェックで誤解されやすいのが、「何を最低賃金と比較するのか」という点です。
最低賃金と比較する対象になるのは、毎月決まって支払われる「基本的な賃金」部分のみです。以下のような手当や賃金は、比較の対象から除外して計算する必要があります。
- 残業代(固定残業代を含む)
- 賞与(ボーナス)
- 通勤手当
- 家族手当
- 精皆勤手当(皆勤手当など)
つまり、「月給の総支給額が最低賃金を上回っているから大丈夫」という判断は誤りです。
固定残業代や前述の除外対象となる手当を差し引いた「基本的な賃金」で、時給換算した金額が最低賃金以上になっているかを確認する必要があります。
【派遣社員を受け入れている企業】適用されるのは派遣先の最低賃金
派遣社員については、派遣会社(派遣元)の所在地ではなく、実際に働いている「派遣先」の最低賃金が適用されます。自社の所在地の最低賃金を基準に確認しましょう。
【賃上げの負担を抑えたい企業】業務改善助成金は「事前申請」が必須
賃上げに伴う負担を軽減する制度として「業務改善助成金」があります。これは、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げ、あわせて生産性向上のための設備投資(機械導入など)を行った中小企業・小規模事業者に対して、その設備投資費用の一部を助成する制度です(活用できる場合があります)。
この助成金を活用する際に特に注意したいのが、手続きの順序です。
業務改善助成金は、原則として「交付決定を受けた後」に賃金引上げや設備投資を実施する必要があります。交付決定を受ける前に賃上げや設備投資を行ってしまうと、助成金の対象外となる可能性が高くなります。
つまり、申請の流れは「事前申請 → 交付決定 → 賃金引上げ・設備投資の実施」という順番を必ず守る必要があります。「決まってから慌てて準備する」のではなく、「決まる前から準備を始める」ことが、確実な受給につながるポイントです。
なお、業務改善助成金は対象となる企業の条件(事業場規模や賃金引上げ額など)や、達成すべき支給条件が定められている制度です。誰でも無条件に受け取れるものではなく、審査や条件を満たすことが必要な点にもご注意ください。
「総支給額が上回っていればOK」は誤り?経営者が陥りやすい3つの勘違い
誤解1:「最低賃金の改定は今年も11月以降になるはずだから、秋以降に準備すれば間に合う」
→ 前年度は発効時期が遅れる地域が多くありましたが、令和8年度は早期発効(10月頃)に戻る方向性が審議で示されています。「去年と同じだろう」という前提でのスケジュールは見直しが必要です。
誤解2:「月給の総支給額が最低賃金を上回っていれば問題ない」
→ 比較対象となるのは基本給部分のみです。固定残業代や各種手当を含めた総支給額で判断すると、実際には最低賃金を下回っていたというケースもあり得ます。
誤解3:「業務改善助成金は申請すれば誰でも必ずもらえる、実質無料で設備投資ができる」
→ 対象企業の条件や支給条件があり、審査を経て交付が決定する制度です。また、交付決定前に賃上げや設備投資を行うと対象外になる可能性があるため、「まず申請」が大原則です。
【FAQ】金額未確定の今、何から手をつければいい?経営者からよくある質問
Q1. まだ最低賃金の金額が決まっていませんが、今は何をすればよいですか?
A. 金額が確定する前の今だからこそ、自社の給与体系(特に基本給部分)を点検しておくことをおすすめします。誰の給与が最低賃金に近いか、固定残業代や各種手当を除いた金額がいくらかを把握しておくと、金額確定後の対応がスムーズになります。
Q2. パート・アルバイトだけでなく、月給制の社員も確認が必要ですか?
A. はい。月給制であっても、毎月支払われる基本的な賃金(除外対象の手当を差し引いた金額)を時給換算した金額が最低賃金を下回っていないか確認が必要です。特に固定残業代を導入している企業は注意が必要です。
Q3. 派遣社員を受け入れていますが、どちらの最低賃金が適用されますか?
A. 派遣元(派遣会社)ではなく、実際に働いている派遣先の事業所がある都道府県の最低賃金が適用されます。
Q4. 業務改善助成金は、賃上げしてから申請してもよいですか?
A. いいえ。原則として、交付決定を受ける前に賃上げや設備投資を実施してしまうと、助成金の対象外となる可能性が高くなります。必ず「事前申請」を行い、交付決定を受けてから実施するようにしてください。
Q5. 業務改善助成金は誰でも利用できますか?
A. 対象となる企業の条件(事業場規模や賃金引上げ額など)や支給条件が定められており、審査を経て交付が決定します。条件によって活用できるかどうかが異なりますので、詳細は専門家にご確認いただくことをおすすめします。
【チェックリスト】最低賃金確定前に自社で確認すべき7項目
- 自社のパート・アルバイトの時給が、現在の都道府県の最低賃金を上回っているか確認した
- 月給制の従業員について、基本給部分のみを時給換算した金額を確認した
- 通常の残業代や固定残業代・通勤手当・家族手当・精皆勤手当などを除いて計算しているか確認した
- 派遣社員を受け入れている場合、派遣先(自社所在地)の最低賃金を基準にしているか確認した
- 業務改善助成金の活用を検討する場合、自社が対象条件を満たすか確認した
- 業務改善助成金は「事前申請が必須」であることを社内で共有した
- 最低賃金改定の最新情報(目安額の答申、都道府県ごとの決定額)を定期的に確認する体制を整えた
まとめ:金額確定を待たず、基本給の点検と助成金の準備を今のうちに
2026年度の最低賃金は、2026年6月30日時点ではまだ決定していませんが、審議は始まっており、今年は例年通り10月頃の早期発効に戻る可能性が高い状況です。
「金額が決まってから対応する」のではなく、「決まる前の今のうちに、基本給部分の確認や助成金の準備を進める」ことが、慌てずスムーズに対応するための鍵になります。
早めに着手することで、賃上げへの対応も、助成金の活用も、確実に進めやすくなります。
業務改善助成金の活用や給与体系の点検は専門家にご相談ください
業務改善助成金の活用方法や、自社の給与体系の点検方法について、より詳しく知りたい方は、以下のコラムもあわせてご覧ください。
また、自社の状況に応じた具体的な確認や手続きについては、社会保険労務士などの専門家にご相談いただくことをおすすめします。
当事務所では無料相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。






