【コラム】時間外労働の上限規制をおさらいしましょう
2019年(中小企業は2020年)に行われた残業時間の上限規制は適切に運用できていますか?
今回は時間外労働の上限規制について簡単におさらいをしていきましょう。
■時間外労働の上限規制
<改正前>
従来は残業時間の上限がなく、実質青天井でした。
<改正後>
改正により、残業時間の上限を定め、これを超える残業ができなくなりました。
★法律による上限(原則)
・月45時間
・年360時間
▶月45時間は1日当たり2時間程度の残業に相当します。
★法律による上限(例外)…臨時的な特別な事業がある場合
・年720時間
・複数月平均80時間※時間外+休日
・月100時間未満※時間外+休日
・月45時間を超えることができるのは、年間6か月まで
▶月80時間は1日当たり4時間程度の残業に相当します。
■労働時間管理の実務イメージ
ステップ1:時間外労働、休日労働について36協定を締結します。
少しでも残業が見込まれる場合には「36協定」の作成と届出が必要です。
残業時間が1日当たり2時間程度を越えそうな場合には、「特別条項」の作成と届出も必要です。
ステップ2:毎月の時間外労働、休日労働の時間数と、その合計を把握します。
法定1日8時間・1週40時間を超える部分を把握する必要があります。
「使用者の現認による確認」や、「タイムカード、ICカード、パソコンの記録など客観的な記録」などで労働時間を適正に把握する必要があります。
詳しくはガイドラインもご覧ください。
ステップ3:年度(=36協定の対象期間)における
時間外労働が月45時間を超えた回数(特別条項の回数)と
時間外労働の累積時間数を把握します。
特別条項の回数(月45時間を超える回数)は6回までです。
ステップ4:毎月の時間外労働と休日労働の合計時間数について、
2~6か月の平均時間数を把握します。
ステップ2で把握した時間外労働と休日労働の合計時間数をもとに、
2か月平均、3か月平均、4カ月平均、5カ月平均、6か月平均を算出します。
★すべての月について、隣接する2~6か月の平均が80時間以内となるように
管理する必要があります。
ステップ5:36協定に定めた内容を順守するよう日々の労働時間を管理する
チェックポイント
①「1日」「1カ月」「1年」のそれぞれが36協定で定めた時間を越えないこと
②休日労働の回数・時間が、36協定で定めた回数・時間を越えないこと
③休日労働の回数(=時間外労働が限度時間を超える回数)が、36協定で定めた回数を超えないこと
④毎月の時間外労働と休日労働の合計が、100時間以上にならないこと
⑤月の時間外労働と休日労働の合計について、どの2~6か月の平均をとっても、1カ月当たり80時間を超えないこと
▶出典:働き方改革関連法に関するハンドブック~労働時間の上限規制等について~(厚生労働省HP)
まとめ
少しでも残業が見込まれる場合には、「36協定」の届出が必要です。
残業時間が1日当たり2時間程度を越えそうな場合には、「特別条項」の届出も必要です。
休日労働と時間外労働の合計して80時間を超える月が全くないような事業場であれば、
上記チェックポイントの①~③だけでよいです。
④⑤のポイントは今回の法改正で初めて導入される規制となり、
時間外労働と休日労働を合計するという新たな管理が必要となります。