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【コラム】労働裁判事例から学ぶ配置転換の注意点

労働裁判の判例は、実務における重要な指針を提供してくれます。今回は、実際の労働裁判事例(滋賀県社会福祉協議会事件)を取り上げ、職種や勤務地の限定合意がある場合の配置転換について考えてみます。

労働裁判事例(滋賀県社会福祉協議会事件)から学ぶ配置転換の注意点

滋賀県社会福祉協議会事件の概要と争点

概要:
本事件は、滋賀県の社会福祉法人が運営する施設に勤務していた技術職員が、配置転換命令を受けたことをめぐる裁判です。当該技術職員は、職種や勤務地に限定する合意があったとして、配置転換命令の無効を主張しました。一方、使用者側は配置転換が適法であると主張しました。

争点:

  1. 配置転換命令の適法性:
    就業規則や労働契約で配置転換に関する規定が存在するか、また職種や勤務地の限定合意があるかどうかが問題となりました。
  2. 権利濫用の有無:
    仮に職種や勤務地の限定合意がない場合でも、配置転換命令が労働契約法上の権利濫用に該当するかどうかが争点となりました。

最高裁は「職種および勤務地の限定合意が存在する場合には、権利濫用審査を行う必要がなく、配置転換は違法である」と判断しました。
この結論は、一審および二審の判断を覆す形となりました。

 

配置転換の有効性の検討フロー

以下は、最高裁の判断した配置転換の適法性を判断するためのフローです。
このフローを元に、実務での判断を進めることが重要です。

配置転換の適法性を判断するためのフロー 判断基準 最高裁結論
①配転について定める規程が就業規則にあるか? ない場合 配転は違法
②職種限定、勤務地限定の合意はあるか? ない場合 配転は違法
③権利濫用に該当するか? 該当する場合 配転は違法
④上記全てに該当しない場合 配転は違法

 

実務でのポイント

この判例から得られる教訓は次の通りです:

  1. 就業規則の整備 配置転換の規程が明確に記載されているかを確認し、不足している場合は速やかに整備しましょう。
  2. 労働契約の確認 職種や勤務地について限定合意がある場合、配置転換の命令は基本的に違法となるため、契約内容を事前に把握しておくことが重要です。
  3. 従業員との合意形成 配置転換を行う際には、必ず従業員本人の同意を得る努力を行いましょう。また、必要に応じて一定の金銭による合意退職の提案も検討することができます。
  4. 整理解雇の4要素に基づく判断 配置転換の代替案として整理解雇を行う場合は、
    • 人員削減の必要性
    • 解雇回避努力の有無
    • 解雇対象者選定の合理性
    • 手続きの妥当性 を慎重に検討する必要があります。

労働条件明示義務の改正との関係

令和6年4月から改正された労働条件明示義務では、就業場所と業務内容の変更範囲を明確に示す必要があります。この改正により、職種や勤務地の限定合意が暗黙的であった場合でも、明確化を求められることが予想されます。不明確な場合、限定合意があると判断される可能性が高まるため、事前に記載内容を見直すことが重要です。

 

まとめ

配置転換の適法性を判断する際には、就業規則や労働契約を十分に確認し、従業員との合意形成を図ることが必要不可欠です。また、令和6年4月の改正を踏まえ、労働条件通知書や就業規則の内容を最新の法規制に適合させることが求められます。

配置転換や労働条件変更についてお悩みの際は、ぜひ弊社にご相談ください。

 

 

 

 

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