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【人事労務コラム】精神疾患が疑われる従業員への対応 |社労士 岡山・倉敷

【小規模事業所向け】精神疾患が疑われる従業員への対応 ~産業医がいない会社でもできる「安全配慮」の考え方~

中小企業や個人事業主の皆さまから、従業員の体調や勤務態度の変化に関するご相談を多くいただきます。

「最近、社員の様子がおかしいがどう対応すればよいかわからない」
「産業医がいないからメンタル不調対応は難しいのでは?」

今回のコラムでは、小規模事業所でもできる対応フローをわかりやすく解説します。

◆ 小規模事業所でも安全配慮義務はある

常時50人未満の事業所では産業医の選任義務はありませんが、
従業員の健康に配慮し、安全に働ける環境を守る「安全配慮義務」は全ての事業所にあります。

産業医がいなくても、従業員のメンタル不調を放置せず、適切な対応を心がけましょう。

◆ 精神疾患が疑われる従業員への対応フロー

① 異変に気づく(態度・言動・勤務状況)

・遅刻や欠勤の増加
・業務ミスの頻発
・情緒不安定な言動や突然の涙

など、従業員の様子に「いつもと違うな」と感じた場合、単なる勤務態度の問題ではなく、体調やメンタル不調の可能性も念頭に置くことが重要です

② 面談で体調を確認(注意ではなく対話)

まずは管理者が面談を行い、勤務への支障が出ていないか、体調面での不安がないかを穏やかに確認します。

「最近、少し元気がないように見えますが、体調は大丈夫ですか?」
「何か心配ごとはありませんか?」

この面談は、注意指導ではなく健康状態を確認するための“体調確認面談”という位置付けにします。
そして必ず、面談内容は記録に残しておくことが重要です。
記録は、後々の「会社として安全配慮を行っていた証拠」として役立ちます。

面談の頻度は、状況によって1回ではなく複数回行うことも視野に入れます。

③ 主治医の診断書の提出依頼・受診勧奨

体調不良の疑いがある場合は、本人に医療機関での受診を勧めます。

ただし、ここで重要なのは、会社や管理者が本人の病気を診断する立場にはないということです。診断はあくまで医師の役割であり、会社側は「医療的に診断する・病名を決める」という行為は行いません。

また、本人の同意がない限り、無理に受診を強制することもできません。
この段階では「医療機関につながるとラッキー」くらいの気持ちで、穏やかに本人の気づきを促すことが現実的です。

特に、周囲から見ると「やる気がない」「態度が悪い」と誤解されやすいケースも多く、本人の気質なのか、病気由来なのか、病識があるのかは会社側だけでは判断困難です。
できるだけ主治医への受診につなげ、もし病気が背景にあるなら、早期に治療の機会を提供できるのが望ましい対応です。

受診勧奨や診断書提出の依頼は必ず記録に残します。

④ 医療機関に繋がらなかった場合の対応

本人が受診を拒否し、診断書提出にも応じない場合は、ここからは会社の安全配慮義務を果たす意味で、就業規則に基づく労務管理の段階に入ります。

  • 面談・受診勧奨の経緯を記録し続ける

  • 安全配慮義務の観点から、体調確認ができない以上は就業を控えさせる判断も検討

  • 「本人の健康状態が確認できない以上、就業継続は困難である」と説明

  • 就業規則に基づき労務提供の受領拒否 → 欠勤扱いとする

※ もちろん、ここでも全ての対応内容を記録に残します。

⑤ 主治医の診断書を得た場合

医師の意見をもとに、

  • 通常勤務可能

  • 軽減勤務可能(業務調整・時短など)

  • 就労不可(休職相当)

を判断し、適切に対応します。

⑥ 状況に応じて休職/業務調整/復職支援

  • 診断書に基づき、休職・軽減勤務・復職支援など適切に対応します。

  • 休職が長期化する場合は、就業規則の規定に基づく休職期間満了や合意退職も検討課題となります。

⑦ 改善が見られない場合の対応について

対応は個別ケースで異なり、慎重な対応が求められます。
退職勧奨や解雇を検討する際は、必ず専門家に相談しリスクを把握したうえで判断しましょう。

◆ 産業医がいる場合の追加対応

産業医がいる場合は、本人に産業医面談を業務命令として指示し、
産業医と主治医の意見を照合したうえで就業可否の判断を行うことが可能です。

産業医の関与があることで、より専門的で客観的な判断と安全配慮が期待できます。

◆ 地域産業保健センターの活用

産業医がいない小規模事業所向けに、地域産業保健センターがあります。
無料でメンタルヘルス支援を受けられるため、ぜひ活用をおすすめします。

岡山産業保健総合支援センター

◆ まとめ

小規模事業所でも、安全配慮義務は法律で求められています。
産業医がいなくても、主治医との連携や地域資源の活用により、従業員のメンタル不調に適切に対応可能です。

解雇などの重大判断は慎重に、専門家に相談しながら進めましょう。

 

 

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