人事労務と助成金に特化した岡山県最大規模の事務所
お電話でのお問い合わせ
086-436-6286
平日9:00~18:00

【人事労務コラム】社会保険の加入対象が段階的に拡大します|社労士 岡山・倉敷

2025年6月の通常国会において社会保険(厚生年金・健康保険)の加入対象の拡大が可決され、この条件が段階的に緩和されてくことが決まり、社会保険の壁として意識されてきた106万円の壁に影響してきます。今回のコラムではこの改正内容についてわかりやすく解説します。

 

パート主婦が気になる「2つの壁」

パートやアルバイトで働く人がよく口にする「〇〇万円の壁」。代表的なのが「106万円の壁」と「130万円の壁」です。実はこの2つ、「税金の壁」と「社会保険の壁」で性質が違います。

まずは、この2つの壁について簡単に解説します。

「税金の壁」とは?

壁(目安年収) 内容
100万円の壁 住民税の支払いが発生する年収
(自治体によってはこの金額基準が少し異なる)
103万円の壁 所得税の支払いが発生する年収
150万円の壁 配偶者の所得控除に関係する年収の額
(配偶者控除、配偶者特別控除)

これらはいずれも税金に関する制度。税金が少しずつ増えるだけで、手取りが極端に減るわけではありません。

「社会保険の壁」とは?(手取りに直結!)

本コラムの本題はこちら。社会保険の壁は手取りに大きく影響します。ポイントは以下の2つです。

壁(年収目安) 内容
106万円の壁 勤務先が一定条件(従業員51人以上など)を満たす場合、本康保険・厚生年金保険への加入義務が発生する年収です。保険料が引かれるため、手取りが減る可能性があります。
130万円の壁 配偶者の社会保険(第3号被保険者)に扶養されていた人が自分で国保・国年に加入することになります(保険料自己負担)。

税金の壁と違って、社会保険の壁は“年収超えたら自動で保険料がかかる”という、明確な「支出増」を伴うのが特徴です。

💡 でも実は、超えた方がトクになることも…?

社会保険に加入すると、

  • 将来の年金(厚生年金)が手厚くなる

  • 傷病手当金や出産手当金が受け取れる

  • 医療費の自己負担上限が軽減される(高額療養費制度)

など、多くのメリットもあります。長い目で見ると、壁を避けるよりも“超えて得をする”という選択肢もあります。

\年金改革法案を解説/
社会保険(厚生年金・健康保険)の加入対象の拡大について

それでは具体的な改正ポイントを見ていきましょう。

今回の加入拡大のポイントは、以下の3つです。

  1. 短時間労働者の企業規模要件を縮小・撤廃
  2. 短時間労働者の賃金要件を撤廃
  3. 個人事業所の適用対象を拡大

①短時間労働者の企業規模要件を縮小・撤廃

今回の改正により、企業規模要件を縮小・撤廃し、②の賃金要件の撤廃もあわせて、短時間労働者が週20時間以上働けば、働く企業の規模にかかわらず、社会保険に加入するようになります。
改正の時期は、10年かけて段階的に縮小・撤廃することとしており、勤め先の規模によって変わります。

 

②短時間労働者の賃金要件を撤廃

いわゆる「年収106万円の壁」として意識されていた、月額8.8万円以上の要件を撤廃します。これにより、年収106万円の壁を意識せず、自分のライフスタイルに合わせて働き方を選びやすくなります。
撤廃の時期は、法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断します(最低賃金1,016円以上の地域で週20時間以上働くと、年額換算で約106万円となります。)。

 

③個人事業所の適用対象を拡大

 現在、個人事業所のうち、常時5人以上の者を使用する法定17業種(※)の事業所は、社会保険に必ず加入することとされています。
今回の改正では、法定17業種に限らず、常時5人以上の者を使用する全業種の事業所を適用対象とするよう拡大します。
ただし、2029年10月の施行時点で既に存在している事業所は当分の間、対象外です。

※①物の製造、②土木・建設、③鉱物採掘、④電気、⑤運送、⑥貨物積卸、⑦焼却・清掃、⑧物の販売、⑨金融・保険、⑩保管・賃貸、⑪媒介周旋、⑫集金、⑬教育・研究、⑭医療、⑮通信・報道、⑯社会福祉、⑰弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業

 

まとめ

👉 つまり将来的には、「週20時間以上・学生でない限り」原則すべての短時間労働者が社会保険に加入することになります。

✅ 会社が今やるべき3つのこと

  1. 対象見込み者のリストアップ
     →「週20時間以上」「学生以外」のパート・アルバイトを洗い出しましょう。
     → 賃金要件【月額88,000円以上】の撤廃は3年以内が見込まれています。

  2. 労働時間・契約内容の見直し
     → 社会保険加入を前提に、勤務時間や契約の更新タイミングを整えましょう。
     → 逆に週20時間未満に調整するなら、そのリスク(人材確保・法令対応)も検討を。

  3. 従業員への説明と同意の準備
     → 加入のメリット(将来の年金・医療保障など)と保険料負担について、丁寧に伝えましょう。
     → 不安が出やすいのは「手取りが減ること」なので、分かりやすい資料も用意を。  → 制度改正の資料はこちら(厚労省)


💡 社労士のひとこと

社会保険の適用拡大は、企業にとっては「コスト増」だけでなく「人材定着の好機」でもあります。
一時的な負担はあっても、中長期での組織の安定性や人材投資と考えるべきフェーズです。
制度理解・就労条件の見直し・社内説明、この3点を丁寧に進めていきましょう。

制度改正に関する不明点や不安な点がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

 

 

CONTACTお問い合わせ

SPECIALIZED SITE専門特化サイト