【DCコラム】iDeCoから企業型DCへの資産移換(ポータビリティ)5つのポイント|社労士 岡山・倉敷
企業型DCをはじめるなら、iDeCoの“資産の引っ越し”も忘れずに
【いま注目される「企業型確定拠出年金」の活用と、iDeCoからの移換ガイド】
「退職金制度がない」「若手が将来に不安を感じている」「福利厚生を充実させたい」 ――そんな中小企業の経営者・人事担当者の間で、近年注目されている制度があります。
それが、企業型確定拠出年金(企業型DC)です。
企業型DCは、企業が掛金を拠出し、従業員自身が資産運用をして老後資金を育てる制度です。 節税メリットや制度の柔軟性もあり、退職金制度の“新しい選択肢”として導入する企業が増えています。
iDeCoとの併用は可能。でも「移換」がおすすめの理由
2022年、および2024年の法改正により、企業型DCとiDeCoの併用が可能になりました。
この場合、以下のような掛金上限のルールがあります:
- iDeCoの掛金:月額20,000円まで
- 企業型DCとiDeCoの合算上限:月額55,000円まで
ただし、実務面では次のような理由から「企業型DCへの資産移換(一本化)」が推奨されることが多いです:
- 管理が二重になる(書類・手続き・照会先)
- iDeCo側の手数料が継続する
- 将来の受給手続きが複雑になる(ただし、受給年齢をずらすことも可能で戦略的に併用する場合もあります)
今回のコラムでは、実務面でのメリットの多いiDeCoからの資産移換(ポータビリティ)について解説します。
【5つのポイントでわかる】iDeCoからDCへの資産移換ガイド
1. iDeCoの資産はどうなる?
企業型DCとiDeCoは併用可能な制度ですが、資産を企業型DCへ移すには、iDeCo側の「加入者資格」を一度喪失する必要があります。 つまり、iDeCoから資産移換をするためには、iDeCoでの積立(拠出)を終了する必要があります。
そのうえで、移換手続きを経て、企業型DC口座に資産が引き継がれるという流れです。
2. 必要書類①「加入者資格喪失届」
こちらの書類は、iDeCoをやめますという書類です。ご本人が、iDeCo加入の金融機関等より取り寄せて提出するものになります。
「●月より企業型に加入するので資格喪失届を提出したい」と金融機関に相談するようにお願いします。
3. 必要書類②「移換依頼書」
資産移換を行うためには、「移換依頼書」を会社を通じて企業型DCの運営管理機関(レコードキーパー)へ提出します。
氏名、生年月日、基礎年金番号等のほかに
- iDeCoの運営管理機関名(該当するもの)
へのチェックが必要となるので、iDeCo加入金融機関にて確認しておきましょう。
4. 資産移換完了までの流れと期間
資産移換の一般的なステップは以下のとおりです:
- iDeCoの「加入者資格喪失届」を提出
- 移換依頼書を企業型DCに提出
- iDeCo→企業型DCへの資産移換(2~3か月)
5. 移換時のリスクと対処法
資産移換時には、次のような注意点があります:
- 相場変動リスク:iDeCo資産は一度売却され、DC口座で再投資されるため、その間に市場が変動する可能性がある
- 配分指定の未設定:DC側で掛金や移換金の配分指定をしておかないと、初期設定のまま(定期預金等)で運用が始まってしまう
対策として、DC加入直後に配分割合を必ず設定しておくこと、相場リスクを事前に理解しておくことが重要です。
おわりに:移換か?併用か?最適な選択をサポートします
iDeCoと企業型DCは、併用することも可能です。しかし、多くの場合、管理や運用のシンプルさを優先して、企業型DCに一本化(資産移換)する方が合理的といえるでしょう。
顧問先や従業員の方が迷われている場合は、
- 制度の併用条件(規約の有無)
- 将来の運用方針
- 管理手数料や運用スタイル
などを踏まえて、最適な形を一緒に考えていきましょう。
【補足】あえてiDeCoを“移換せずに残す”という選択はできる?
中には「iDeCoで積み立てを続けたい」と希望される方もいます。
戦略的にこのような運用を行うことも可能です。
ただし、iDeCoの積立は月額上限20,000円。
これに企業型DCの掛金(例:月35,000円)を加えると、最大でも55,000円までしか拠出できません。
また、管理の手間や口座管理手数料が2つに分かれる点もデメリットです。
基本的には資産を一本化する移換の方が、制度上も実務上もスムーズですが、運用方針によっては併用を選ぶケースもあります。個別にご相談ください。
■まとめ:企業型DC導入時は、iDeCoの確認もお忘れなく
企業型DCの導入は、従業員の将来支援にもつながる前向きな制度改革です。
しかし、すでにiDeCoを利用している方がいる場合は、移換や資格喪失手続きが必要になることがあります。
制度導入時は、ぜひ以下のチェックを!
✅ iDeCo加入者が社内にいるかどうかを確認
✅ 資産移換を行うかどうかを明確にする
✅ 必要な書類を揃えて早めに手続きを進める
ご不明な点がある場合は、当事務所までお気軽にご相談ください。
企業型DC導入時の制度設計から、移換手続きの実務支援まで、社労士がしっかりサポートいたします。