【人事労務コラム】悪気なく発生する賃金不払の落とし穴|社労士 岡山・倉敷
知らぬ間に「未払い残業代」!?
悪気なく発生する賃金不払の落とし穴
令和7年8月7日、厚生労働省が「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)」を公表しました。令和6年(2024年度)の監督指導結果の主な数値は以下の通りです。
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賃金不払事案件数:22,354件(前年比 +1,005件)
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対象労働者数:185,197人(前年比 +3,294人)
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総未払い金額:172億1,113万円(前年比 +70億1,760万円)
そのうち、令和6年中に監督署の指導により解決されたものは以下の通り:
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解決件数:21,495件(96.2%)
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解決対象者数:181,177人(97.8%)
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解決金額:162億732万円(94.2%)
また、監督指導では是正事例や送検事例も公表されています。
中には、悪気はないが正しく支払われていなかったというパターンも多く含まれています。
よくある“悪気なき”事例と防止策
1. 手当を割増賃金計算から除外していた
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事例:職能手当など、割増賃金の基礎に含めるべき手当が除かれていた。
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厚労省の指導:是正勧告により、手当を含めて再計算し、不足分を払う措置
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防止策:給与項目を年1回棚卸しし、給与ソフトの設定を専門家に確認してもらう。
2. タイムカード記録と申告のズレ
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事例:打刻と自己申告の時間に差があり、申告が少ないまま残業代が支払われていた。
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指導:過去に遡って調査し、差額分を支払った上で、申告内容も管理者が日々確認するよう指導
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防止策:打刻と申告の整合性をとり、ズレがあれば理由を確認する運用ルールを作る。
3. 監督署の流れ:是正勧告から送検へ
未払い事案でも、すぐに刑事処分(書類送検)になるわけではありません。
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是正勧告 → 使用者が過去分を支払えばそこで解決。
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是正がなされない or 虚偽報告 → 悪質と判断され、書類送検へ。
つまり、たとえ「知らなかった」「悪気はなかった」でも、改善を怠れば法的リスクが急激に高まります。
まとめ:今ある「改善のチャンス」を活かそう
論点 | リスク | 対策 |
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手当の除外による未払い | 致命的ミスの可能性 | 給与構造を棚卸し・再確認 |
打刻と実態のズレ | 労使間トラブルの温床 | システム整備と現場確認のルール化 |
是正せず放置 | 書類送検リスク | 監督署対応の速やかな実行・誠実な報告 |
未払い事案は経営者の意図とは無関係に発生しており、「是正のチャンス」を逃すと一気に対応コストや reputational risk(信用リスク)が跳ね上がります。ぜひ、年1回の給与計算「健康診断」として、社労士や専門家に点検を依頼する習慣を。
気になる点やご不明な点があれば、ぜひ 弊社までお気軽にお問い合わせください。