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【人事労務コラム】メンタル不調による休職者の「職場復帰支援」―人事院マニュアルのご紹介|社労士 岡山・倉敷

近年、メンタルヘルスの不調を理由とした休職は、業種や企業規模を問わず増加傾向にあります。特に中小企業においては、休職から復職に至るまでのプロセスをどのように進めるか、対応に悩まれる経営者・人事ご担当者様が少なくありません。

人事院が国家公務員向けに作成した資料のご紹介

こうしたなか、人事院が国家公務員向けに作成した「心の健康の問題による長期病休者の職場復帰支援マニュアル」(職員向け手引き・担当者向けマニュアル)が公開されています。

👉 公開ページはこちら
心の健康問題による長期病休者の職場復帰支援マニュアル(人事院)

このマニュアルは国家公務員向けのものではありますが、復職支援における具体的なステップや、組織として押さえておくべき視点など、一般企業でも十分参考になる内容が数多く盛り込まれています。

 

1.「三つの予防」の考え方を押さえる

メンタルヘルス対応は、以下の3段階で整理されています。

区分 内容 小規模企業での実践例
一次予防 不調の未然防止
(職場環境の改善)
長時間残業や人間関係の問題に早期対応。定期的に「気になること」を聞く場を設ける。
二次予防 早期発見・早期対応 遅刻・欠勤・ミスの増加など「小さな変化」を上司がキャッチ。必要に応じて面談や医療受診を促す。
三次予防 休職者の職場復帰支援 医師の意見を踏まえて段階的に復職させる。再発を防ぐフォローアップを行う。

👉 「早めに気づき、無理をさせない」ことが最大の防止策です。

 

2.不調のサインを見逃さない

人事院マニュアルでは、管理者が見るべき「心の不調のサイン」として次が挙げられています。

  • ミスや能率低下が続く

  • 遅刻・早退・欠勤が増える

  • イライラ・無口・孤立など人間関係の変化

  • 頭痛・倦怠感・不眠などの体調不良

こうした兆候が見えたら、すぐに本人に原因を問い詰めるのではなく、「最近どう?無理してない?」と声をかけることが第一歩。
話を聞いたうえで、医療機関の受診や一時的な業務軽減を検討します。

 

 

3.休職に入るときの基本ルール

小規模企業でも、休職に入る際は以下の点を押さえておくと安心です。

  • 医師の診断書を必ず提出してもらう(傷病名・療養期間の見込みを明記)

  • 治療に専念できる期間を設定(会社独自の休職規定に基づく)

  • 会社からの定期的な連絡は、頻度・方法を本人の希望に合わせる(例:月1回メールなど)

  • 個人情報の取扱いには注意し、本人の同意なしに社内で共有しない

👉「安心して休める環境づくり」が、復帰の第一歩です。

 

4.復職を判断するときのチェックポイント

人事院マニュアルでは、復帰判断の目安として次の9項目を示しています。
これは民間企業にも非常に参考になります。

復職可の目安(抜粋)

  1. 職場復帰の意欲がある

  2. 通勤時間帯に一人で安全に通勤できる

  3. フルタイム勤務が継続できる

  4. パソコン作業など集中力を要する業務が可能

  5. 疲労が翌日までに回復している

  6. 睡眠リズムが安定している

  7. 日中に強い眠気がない

  8. 注意力・集中力が回復している

  9. 再休職を防ぐための工夫(服薬・生活リズムなど)が取られている

👉 復職の可否は「働ける状態か」を冷静に判断することが大切。
主治医の診断書があっても、職場が求める水準に達しているかを会社として確認しましょう。

 

5.「試し出勤」や「段階的復帰」を活用する

いきなりフルタイム復帰では再発リスクが高いため、
人事院マニュアルでは「試し出勤(リハビリ勤務)」を推奨しています。

小規模企業でも応用できる形は次の通りです。

期間 内容
第1週 午前のみ出勤、簡単な業務(例:資料整理)
第2〜3週 時間延長、通常業務を一部再開
第4週〜 通常勤務へ移行

この間は給与・労務上の扱い(出勤扱い・休職扱いなど)を明確にしておきましょう。

 

6.復帰後1か月のフォローがカギ

人事院マニュアルでは、復職後1か月以内に面談を行い、
「体調」「業務量」「人間関係」などの状況を確認するよう求めています。

小規模企業でも、次のような対応が効果的です。

  • 管理職が週1回程度、様子を観察

  • 無理が見えたら業務を一時調整

  • 必要に応じて家族や主治医とも連携

👉 復帰がゴールではなく、安定して働けるようになるまで見守ることが大切です。

 

まとめ

公務員のマニュアルは細かく制度化されていますが、その骨格は中小企業でも活かせます。

  • 不調のサインを早くキャッチ

  • 休職時は安心して休ませる

  • 復帰時は医師の診断+職場の判断で慎重に

  • 段階的な復帰と定期フォローをセットで行う

小さな会社ほど「顔の見える距離感」を活かして、
“復職支援のしくみ”を人に優しい企業文化として根づかせることが、長期的な組織の安定につながります。

 

顧問先企業様へのご案内

当事務所でも、近年「メンタル疾患を理由とした休職者対応」に関するご相談が増えています。
職場復帰までのステップや社内ルールの整備には、慎重な判断と個別対応が求められるケースも少なくありません。
顧問先のお客様につきましては、具体的な対応方針や文書整備など、個別の事案についてぜひ当事務所までご相談ください。

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