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【人事労務コラム】定年後再雇用者の「無期転換申込権」にご注意を|社労士 岡山・倉敷

多くの企業で導入されている「定年後再雇用制度」。
一般的には、60歳の定年後に1年ごとの有期契約で雇用を継続する形がとられています。

しかし近年、企業から増えている相談が、次のようなものです。

「定年後再雇用者から無期転換の申込みを受けたが、対応方法が分からない」

実は、定年後再雇用であっても、条件を満たせば“無期転換申込権”が発生します。
制度の理解が不十分なまま運用すると、企業が想定していない無期契約へ移行してしまう可能性があります。

■ 無期転換は「労働者の申し出」により成立する制度

労働契約法18条では、

  • 同一企業で

  • 通算5年を超えて

  • 有期契約が反復更新された場合、
    労働者が申し込めば無期労働契約に転換すると定められています。

ここで特に重要なのは,

企業側から“無期転換の案内をする義務はない”という点です。

無期転換はあくまで労働者の申込みにより発生するものであり、
企業からの通知義務はなく、労働者が申し込んだ時点で、企業はこれを拒否できません。

■ 定年後再雇用者も原則として対象になる

しばしば「定年後の雇用だから無期転換の対象外だろう」と誤解されますが、
法律上、そのような扱いにはなっていません。

そのため、

  • 60歳定年

  • 再雇用で1年契約を更新

  • 通算5年を超える

  • 労働者から無期転換の申込み
    となれば、企業は無期転換を受け入れる必要があります。

無期契約となると、
再雇用制度で想定していた年齢上限が機能しなくなる可能性があり、
人員配置・人件費計画にも影響を及ぼします。

■ 高年齢者の有期契約特例(労使協定+届出)について

ただし、一定の手続きを踏むことで、
定年後再雇用者について無期転換ルールの適用を除外することが可能です。
いわゆる「高年齢者の有期契約特例」です。

◆特例の対象となるのは“自社で定年を迎えた者”のみ

この点は実務上、特に注意が必要です。

特例の対象は、

  • 同一企業で定年(例:60歳)を迎え、
    引き続き同じ企業で再雇用された労働者

    のみとされています。

以下のようなケースは特例の対象外です。

  • 他社で定年退職した人を60歳以上で新規採用した場合

  • グループ会社など別法人で定年 → 別法人へ60歳以上採用された場合

  • そもそも定年規程が存在しない会社の高齢者雇用

特例が使えるかどうかは、
「自社で定年を迎えたかどうか」
によって判断されます。

◆特例の適用には、厳密な要件が必要

  • 適正な労使協定の締結

  • 所轄労基署への届出

  • 就業規則に定年後再雇用制度を明記

  • 「再雇用」か「新規採用」かの線引きが明確であること

これらが不備のまま更新を重ねると、
特例が適用されず、結果的に無期転換が成立してしまうおそれがあります。

■ 企業として確認すべきポイント

  • 定年後再雇用者の通算契約期間を把握しているか

  • 就業規則に定年・再雇用制度が明確に規定されているか

  • 高年齢者の有期契約特例の協定・届出は適正か

  • 再雇用と新規採用の区別が社内で明確か

  • 契約書に更新条項・通算期間が正しく記載されているか

これらが曖昧な状態で更新を続けると、
企業の意図しない形で無期契約が成立する可能性があります。

■ まとめ

  • 定年後再雇用者も無期転換の対象(原則)

  • 無期転換は労働者の申込みにより成立

  • 高年齢者特例の対象は「自社で定年を迎えた者」に限定

  • 協定・届出・規程整備が不備だと特例が無効に

  • 再雇用制度の運用次第で無期転換リスクが高まる

■ 適切な制度運用はトラブル防止につながります

定年後再雇用制度は、企業規模・業種により最適な運用方法が異なります。
「当社のケースだとどうなるか?」「特例は使えるのか?」といったご質問があれば、
どうぞお気軽にご相談ください。


気になる点がございましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

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