【人事労務コラム】同一労働同一賃金ガイドライン見直し案が提示されました〜施行から約5年、企業の対応ポイントは?|社労士 岡山・倉敷

2019年の法施行から5年が経過した「同一労働同一賃金」制度ですが、先日、厚生労働省の労働政策審議会でガイドラインの見直し案が提示されました。
企業の実務対応には一定の影響・変更が想定されます。現時点では「案提示」段階ですが、方向性として以下のような対応が必要になる可能性があります。
1. 待遇差の合理性判断の明確化
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背景:これまで「正社員と非正規で差があっても合理的かどうか」はあいまいな部分があり、企業判断が難しかった。
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見直し案:手当・休暇・退職金・福利厚生など項目ごとに、待遇差の許容範囲・合理性の考え方を具体化。
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実務対応への影響:
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就業規則・賃金規程の見直しが必要になる場合がある(特に非正規向け手当や退職金の扱い)。
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「これまで差をつけていたけど、ガイドライン上は合理性に疑義がある」場合、改善対応が求められる可能性。
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個別労働者への待遇差説明や文書化の必要性が増す。
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今回の見直し案では、正社員とパート・有期・派遣など非正規社員との待遇差がどこまで許されるかを具体化する方向です。
住宅手当や扶養手当、各種休暇の扱いについて、今の規程が「合理的かどうか」を再確認する必要があります。
2. 退職手当(退職金)の取り扱いの明確化
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背景:非正規社員への退職金の扱いは、これまでガイドラインで具体的な指針が少なかった。
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見直し案:退職金制度の適用差が「合理的かどうか」の考え方を明示。
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実務対応への影響:
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非正規社員にも退職金を支給する場合、条件の設定や就業規則への反映が必要になる可能性。
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支給対象者や計算方法の差異が合理的かを検証し、文書化・説明できるようにする必要。
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非正規社員への退職金の適用差について、ガイドライン上の判断基準が明確化される見込みです。
条件設定や規程への反映、文書での説明が求められる可能性があります。
3. 説明義務・透明性強化
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背景:待遇差をどう説明するかがあいまいで、トラブルの温床になりやすかった。
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見直し案:待遇差の理由を文書等で説明する義務・透明性確保の方向性を提示。
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実務対応への影響:
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従業員への待遇差説明の手順・書面化ルールを整備。
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賃金規程・就業規則・労務通知書の修正が必要になる場合。
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待遇差の理由を従業員に説明する義務や透明性の確保も、今回の議論で示されています。
単に制度を整備するだけでなく、説明できる体制づくりが今後求められるでしょう。
4. 経営者として今できること
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就業規則や賃金規程の現状を確認
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手当・退職金・休暇の差異が合理的かをチェック
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従業員への説明ルールや文書化の準備
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労務担当者向けマニュアルのアップデート
現時点ではまだ「案段階」ですが、施行から5年の節目で現場に即した運用の見直しが進むことは間違いありません。
同一労働同一賃金の見直しはまだ案段階ですが、今のうちに規程や運用をチェックし、従業員への説明体制を整えておくことが、将来のトラブル回避につながります。
どうぞお気軽にご相談ください。






