【人事労務コラム】労働基準法における「労働者」定義の見直しに関する議論の現状と展望|社労士 岡山・倉敷

〜実務への影響と、経営者が把握しておくべき留意点〜
現在、厚生労働省において「労働者」の判断基準に関する抜本的な見直しに向けた議論が進められています。
2025年末に労働基準法改正案の国会提出は見送られましたが、これは議論の白紙化を意味するものではありません。
事実、2026年1月には「労働者」に関する研究会(第5回)が開催され、実務に資する判断基準の具体化に向けた議論が継続されています。
今後数年以内に想定される法改正と、現時点で経営者が把握しておくべきポイントを整理します。
1. 議論の背景と主な論点
現行の「労働者」の判断基準は、昭和60年に示された報告書がベースとなっています。
IT化や働き方の多様化(プラットフォーム労働等)に対応するため、
以下の点を中心に基準の現代化が検討されています。
「指揮監督」概念の明確化
アプリを通じた指示や、システムによるペナルティといった現代的なコントロールが「指揮監督」に該当するかどうかの精査。
「諾否(だくひ)の自由」の評価
業務依頼を拒否する自由が実質的に保障されているか。
形式的な契約よりも実態を重視する方向性。
2. 影響が予想される主な分野
従来の「直接雇用」以外の形態で個人を活用している業種において、特に注意が必要です。
- ギグワーク・配送業: フードデリバリーや軽貨物運送。
- IT・クリエイティブ: エンジニア、デザイナー、ライターへの継続的な業務委託。
- 店舗型サービス: 業務委託契約の講師、エステティシャン、インストラクターなど。
3. 「労働者」と認められた場合の影響
実態が「労働者」であると判断された場合、以下の法令が適用されます。
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労働基準法:法定労働時間の管理、残業代の支払い、有給休暇の付与義務。
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労働者災害補償保険法:業務上の事故に対する補償責任(保険料の負担)。
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最低賃金法:時給換算での最低賃金以上の支払い。
4. 今後のスケジュール
改正案の提出時期は流動的ですが、議論のロードマップは以下の通りです。
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2026年(令和8年)中
研究会による報告書のとりまとめ、および労働政策審議会での議論。 -
今後数年以内
法案提出・成立、および改正法の施行。
※法案提出は延期されましたが、判断基準を明確化する「ガイドライン」等が先行して示される可能性もあります。
まとめ:経営実務における準備
「労働者性」の認定は、過去に遡って未払い賃金や社保料の負担が生じる等、経営上の大きなリスクとなります。
法改正の施行を待つのではなく、現在の外部委託契約や運用実態が、将来的な新基準に照らして適切であるか、早期に棚卸しを行うことが推奨されます。
【公式資料・参考リンク】
第5回 労働基準法における「労働者」に関する研究会(厚労省)
※2026年1月28日に開催された最新の議事録です。
※最新の第5回(2026年1月28日開催)議事録もこちらから確認できます。労働基準関係法制研究会 報告書(令和7年1月)
※法改正の全体方針が示されている基本資料です。
自社の契約実態に関する不安や、具体的な確認方法については、当事務所(または専門家)までお気軽にご相談ください。






