【DCコラム】選択制企業型確定拠出年金の導入前に経営者が知っておくべき5つの注意点とよくある疑問|社労士 岡山・倉敷

選択制企業型DC(確定拠出年金)導入前に経営者が知っておくべき5つの注意点
選択制企業型DC(確定拠出年金)は、従業員の手取りを増やしながら将来の資産形成を支援できる、有効な選択肢となる制度です。
ただし、メリットだけを見て導入を進めると、後から「思っていたのと違った」というトラブルにつながることがあります。
特に次の5点は、導入前に必ず確認が必要です。
- 従業員への「投資教育」は法律上の努力義務であり、実務上は必ず取り組む必要があること(会社の負担を減らす方法もあります)
- 役員報酬の扱い方によって、税務上の注意点が変わること(安全に進めやすい方法もあります)
- 60歳以降も、規約の定め方によっては、在籍したまま年金を受け取れる場合があること
- 育児休業中の掛金の一時停止には条件があること
- 退職した社員の資産は「6ヶ月以内」に手続きしないと自動的に移されてしまうこと
これらは怖がる必要はありません。順番に確認し、準備を進めれば、安全に導入できます。本記事では、導入を検討している企業様、経営者様からよく寄せられる疑問に答えていきます。
なお、制度導入にあたっては、社会保険労務士等の専門家にご確認ください。
制度概要:選択制企業型DCとは何か
企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、会社が掛金を拠出し、従業員自身がその資産を運用して、将来の年金として受け取る制度です。
「選択制」と呼ばれる導入方法では、給与とは別に「生涯設計手当」を新設し、従業員がその中から、
- 掛金として確定拠出年金に拠出する
- 給与として今まで通り受け取る
のどちらかを選べる仕組みにします。掛金として拠出した部分は、所得税・住民税・社会保険料の対象外となるため、従業員の手取りが増える効果が期待できます。一方で、給与として受け取る部分は、これまで通り課税・社会保険料の対象になります。
選択制企業型DC導入企業への影響
選択制企業型DCを導入すると、導入企業では次のような変化が生じます。
- 給与規程・賃金台帳・給与明細の見直しが必要になります
- 会計処理(仕訳)に「退職給付費用」などの勘定科目が必要になります
- 役員の掛金の拠出方法(役員報酬を減額する方法/役員報酬とは別に上乗せで拠出する方法)によって、必要な手続きが異なります
- 従業員に対して、社会保険・雇用保険の給付額に影響する可能性を正確に説明する義務が会社に生じます
- 一度加入した従業員は、在職中は原則として掛金の積み立てを止めることができません
これらは制度の欠点ではなく、正しく手続きすれば問題なく運用できる内容です。次の章で、具体的な対応方法を確認します。
実務対応・注意点:よくある疑問Q&Aで解説
Q1. 掛金を拠出すれば、投資の勉強は従業員任せでよいですか?
投資教育は、確定拠出年金法上「努力義務」(必要な措置を講ずるよう努めなければならないもの)と定められています。ただし、厚生労働省の案内などでも重要な取り組みとして位置づけられており、実務上は必ず対応しておきたい事項です。
「投資教育」と聞くと、会社が自前で研修を用意しなければならないと身構えてしまうかもしれませんが、そこまで心配する必要はありません。多くの運営管理機関では、投資教育用の資料やセミナーなどのサポートを用意しています。こうした資料提供・情報提供のサポートを活用すれば、会社に大きな負担をかけずに投資教育を進めることができます。導入時には、どのようなサポートが利用できるかを確認しておくと安心です。
Q2. 役員の掛金は、いつでも全額会社の経費にできますか?
拠出の方法によって異なります。役員の掛金には、大きく分けて2つの方法があります。
方法A:役員報酬を減額し、その分を掛金に充てる方法
役員報酬は、原則として事業年度の途中で変更すると、税務上、減額した部分が損金不算入(経費として認められない)となるおそれがあります。株主総会での決議時期と掛金拠出の開始時期を合わせるなど、厳格な手続きが必要です。
方法B:役員報酬とは別に、会社が掛金を上乗せして拠出する方法
この方法であれば、拠出した掛金は役員報酬とはみなされず、全額を福利厚生費として損金処理できます。報酬改定の時期に関わらず加入できるため、方法Aに比べて手続きの負担が少なく、実務上取り扱いやすい方法として選ばれることが多くあります。
どちらの方法が自社に適しているかは、役員報酬の設計や会社の状況によって異なりますので、導入前に必ず専門家に確認してください。
Q3. 60歳になれば、働きながらでもすぐに年金を受け取れますか?
企業型DCの「加入者」である間は、老齢給付金を請求することができません。ただし、「退職しないと一生受け取れない」というわけでもありません。
同じ会社に勤め続けていても、企業型DCの規約で定められた加入できる年齢の上限(例:60歳、65歳など)に達すると、「加入者」としての資格を失い、資産の運用のみを行う「運用指図者」という立場に変わります。この場合、退職しなくても老齢給付金を請求・受給することができます。
つまり、在籍中に受け取れるかどうかは、自社の規約でどのように加入年齢の上限を定めるかによって変わります。この点を従業員に伝えていないと、「もらえるはずなのにもらえない」「一生もらえないと思っていた」といった誤解につながりますので、規約の内容とあわせて正確に説明しましょう。詳細な規約設計については、運営管理機関や社会保険労務士にご確認ください。
Q4. 育児休業中は、誰でも自由に掛金を止められますか?
いいえ、2つの条件を同時に満たす場合に限られます。
- 休業により給与が完全に無給となっていること
- 労使で合意し、自社の確定拠出年金の規約に「中断できる」ことが明確に定められていること
「育休に入れば誰でも止められる」という説明は不正確です。自社の規約にこの定めがあるかどうかを、導入時に必ず確認してください。
Q5. 退職した社員の年金資産は、いつまでも会社や本人が自由に持ち運べますか?
退職後「6ヶ月以内」に手続きをする必要があります。
この期間内に本人が移換手続き(ポータビリティ)を行わないと、資産は自動的に国民年金基金連合会に移され(自動移換)、その間手数料が資産から差し引かれ、運用もされない状態になります。退職時には、会社から本人へ「6ヶ月以内に手続きが必要」であることを案内する仕組みを整えておくと安心です。
Q6. 掛金として拠出すれば、社会保険料が減る分、メリットしかありませんか?
いいえ、社会保険料が下がる一方で、将来受け取る給付にも影響する可能性があります。
選択制DCで給与(生涯設計手当)を減額して掛金に充てると、社会保険料の負担が軽くなり、手取りが増える効果が期待できます。しかしその一方で、標準報酬月額(社会保険料の計算のもとになる金額)が下がることで、将来の老齢厚生年金や、傷病手当金・出産手当金(健康保険)、育児休業給付金・失業給付(雇用保険)などの給付額が減る可能性があります。会社には、この点も含めて従業員に正確に説明する義務があります。
FAQ
Q. 企業型DCを導入すると、会社の負担は増えますか?
掛金は法人の福利厚生費として損金算入できます。また、運営管理手数料や資産管理手数料など、制度を維持するための費用が発生しますが、制度維持の費用も福利厚生費として損金算入できます。詳細は専門家にご確認ください。
Q. 従業員は全員加入させないといけませんか?
制度設計によって異なります。希望する人のみ加入できる「選択制」とする設計も可能です。制度設計は専門家と相談しながら進めることをおすすめします。
Q. すでに他社で確定拠出年金に加入していた社員が入社した場合はどうなりますか?
移換前の状況(個人型加入者だったか、企業型の資格を喪失していたかなど)によって手続きが異なります。個別のケースについては専門家にご確認ください。
Q. 掛金額はあとから変更できますか?
会社が定めた変更月であれば変更可能な場合があります。詳細は導入する制度の内容によって異なりますので、契約先の運営管理機関にご確認ください。
Q. 導入までにどれくらいの準備期間が必要ですか?
給与規程の変更、役員報酬の決議、従業員への説明準備などがあるため、早めに専門家に相談し、逆算してスケジュールを立てることで、スムーズに準備を進められます。弊社で導入する場合は約6か月かかります。
チェックリスト:導入前に自社で確認すべきこと
① 制度設計・規程の確認
- 全員加入とするか、希望者だけが加入できる「選択制」で導入するかを決めたか
- 選択制で導入する場合には、給与規程・賃金台帳・給与明細の変更が必要であることを確認したか
② 役員報酬に関する確認
- 役員の掛金を「役員報酬の減額」で拠出するか、「役員報酬とは別」に拠出するかを決めたか
- 減額方式の場合、株主総会・取締役会の決議時期と掛金拠出の開始時期を合わせられるか
③ 従業員への説明準備
- 運営管理機関が提供する投資教育用の資料・セミナーなどのサポート内容を確認したか
- 社会保険・雇用保険給付が減る可能性について、説明資料を用意したか
- 自社の規約における加入年齢の上限と、在籍中の受給ルールを説明する準備をしたか
④ 退職・異動時の対応
- 退職時に「6ヶ月以内の移換手続き」を案内する仕組みを整えたか
- 他制度からの移換者がいる場合の取扱いを確認したか
⑤ 導入後の実務
- 口座振替・掛金拠出のスケジュールを把握したか
- 会計処理(仕訳)の勘定科目を新設したか
まとめ
企業型DCは、従業員の資産形成を後押しできる有効な制度です。ただし、投資教育の進め方、役員報酬の拠出方法による税務上の違い、給付請求のタイミング、育児休業中の扱い、資産移換の期限、社会保険給付への影響など、専門的な判断が必要な場面が多くあります。
弊社では、企業型確定拠出年金の導入サポートを行っております。
自社だけで準備するのは大変なこれらの制度導入について、制度導入、および、導入後の保守管理もフルサポートを行っております。
「自社の場合はどう進めればよいか」など、具体的なご相談は、無料相談にて承っておりますのでお気軽にご相談ください。






