【人事労務コラム】2026年10月から始まる「保険料調整制度」とは?企業が知っておきたい対象者・保険料・手続き|岡山・倉敷

この記事の結論(30秒で読める版)
- 保険料調整制度は、2026年10月1日から始まります。
- すべてのパート・アルバイトが対象ではありません。すべての会社が使えるわけでもありません。 会社(事業所)にも、従業員にも条件があります。
- 会社の条件の代表例は、2026年10月以降に「任意特定適用事業所」(労使で合意して、短時間労働者も社会保険に加入させる事業所)になったことです。2026年10月1日の時点で、すでに社会保険の適用拡大の対象になっている会社(厚生年金の被保険者が51人以上の会社など)は対象外です。
- 従業員の条件は、短時間労働者として社会保険に加入し、標準報酬月額が12.6万円以下であることです。
- 会社は、従業員の保険料の軽減分を一時的に多く納めます。この分は、数カ月後に還付される仕組みです。ただし、条件があります。
- まずは、自社が対象の事業所か、対象になりそうな従業員がいるかを確認しましょう。判断に迷う場合は、社会保険労務士にご相談ください。
2026年10月1日から、パート・アルバイトなどの短時間労働者の社会保険料の負担を軽くする「保険料調整制度」が始まります。
「うちの会社は対象なのか」「会社の負担は増えるのか」「何を準備すればいいのか」。経営者や人事・総務のご担当者は、この3点が気になるはずです。
この記事では、日本年金機構の公式情報をもとに、企業側が確認すべきポイントを順番に整理します。
なお、この記事の内容は2026年9月29日時点で確認した情報です。手続きの様式など、今後変わる部分があります。実際に手続きする前に、日本年金機構の最新情報をご確認ください。
保険料調整制度とは?
保険料調整制度とは、新たに健康保険・厚生年金保険(以下「社会保険」)に加入する短時間労働者が、働く時間を抑えなくてもよいようにするための制度です。
会社(事業主)が従業員の保険料を一時的に一部多く負担することで、従業員の保険料負担を通算3年間軽減します。
制度のポイントは次の4つです。
- 軽減されるのは、従業員の社会保険料の負担です。
- 軽減の期間は、会社が利用を申し出た月から通算3年間です。
- 制度を利用しても、従業員が将来受け取る年金額は減りません。
- 会社が申し出て利用を始める制度です。自動で適用されるものではありません。
用語メモ:短時間労働者とは 社会保険の適用拡大の対象となる事業所で働く、通常の従業員より短い時間で働く人のことです。具体的には、1週間の所定労働時間または1カ月の所定労働日数が通常の従業員の4分の3未満で、週の所定労働時間が20時間以上、かつ学生ではない人を指します。
なぜ2026年10月から始まるの? 「106万円の壁」・適用拡大との関係
2026年10月前後には、似た名前の変更が重なります。混同しやすいので、まず表で区別しておきましょう。
| 項目 | 内容 | 時期 |
|---|---|---|
| ①賃金要件の撤廃(いわゆる「106万円の壁」の見直し) | 加入の条件のうち「月額の賃金が8.8万円以上」をなくす | 2026年10月(予定) |
| ②企業規模要件の段階的な撤廃(適用拡大) | 短時間労働者が社会保険に加入する事業所を、従業員の少ない事業所にも広げる | 2027年10月から2035年10月まで段階的に |
| ③保険料調整制度 | 新たに加入する短時間労働者の保険料負担を、会社の一時的な負担で軽減する | 2026年10月1日から |
この3つは関連していますが、同じ制度ではありません。
特に注意したいのが、①と③の関係です。「106万円の壁がなくなる」からといって、全員が保険料調整制度の対象になるわけではありません。
①の賃金要件の撤廃は、すでに社会保険の適用拡大の対象となっている事業所(特定適用事業所)で働く短時間労働者に関わる話です。一方、保険料調整制度を使えるのは、次の章で説明する条件に当てはまる事業所です。2026年10月1日の時点ですでに特定適用事業所になっている事業所は、対象外とされています。
保険料調整制度の対象になる事業所・従業員
対象かどうかは、事業所の条件と従業員の条件の両方で決まります。
対象となる事業所
対象となるのは、次の(1)〜(4)のいずれかに当てはまる事業所です。
| 区分 | 対象となる事業所 |
|---|---|
| (1) | 2026年10月1日〜2035年9月30日の間に、任意特定適用事業所になった事業所 |
| (2) | 2027年10月1日以降の適用拡大で、新たに特定適用事業所になった事業所 |
| (3) | 任意適用事業所の個人事業所のうち、2027年10月1日〜2035年9月30日の間に、厚生年金保険の被保険者が51人以上になって特定適用事業所になった事業所 |
| (4) | 2035年10月1日以降に、任意適用事業所になった個人事業所 |
(2)の対象になる時期は、厚生年金保険の被保険者数によって次のように分かれます。
| 対象になる時期 | 厚生年金保険の被保険者数 |
|---|---|
| 2027年10月〜 | 36〜50人 |
| 2029年10月〜 | 21〜35人 |
| 2032年10月〜 | 11〜20人 |
| 2035年10月1日 | 10人以下 |
この被保険者数には、短時間労働者は含みません。
用語メモ
- 特定適用事業所:短時間労働者にも社会保険の加入義務がある事業所です。従業員(短時間労働者を除く厚生年金保険の被保険者)が、1年のうち6カ月以上、50人を超えることが見込まれる企業などが当てはまります。
- 任意特定適用事業所:被保険者数が特定適用事業所の基準に満たなくても、労使の合意にもとづいて事業主が申し出ることで、短時間労働者も社会保険に加入させる事業所になったものです。
つまり、2026年10月の時点で保険料調整制度を使える可能性があるのは、従業員が50人以下で、労使の合意により任意特定適用事業所になった事業所が中心です。従業員が50人以下の事業所でも、2027年10月以降は、規模に応じて順番に対象になっていきます。
対象にならない事業所
上の(1)〜(4)に当てはまっても、次のどちらかに該当する事業所は対象外です。
- 2026年10月1日の時点で、すでに特定適用事業所(任意特定適用事業所を含む)になっている事業所
- 上の(1)〜(4)に当てはまる前に、被保険者数が常時51人以上になった事業所
対象となる従業員
次の2つに両方当てはまる被保険者が対象です。
- 短時間労働者として、社会保険に加入している
- 標準報酬月額が12.6万円以下である
用語メモ:標準報酬月額とは 社会保険料を計算するために、毎月の給料を一定の幅で区切って当てはめた金額です。
対象にならない従業員
次のような人は、制度の対象外です。
- 70歳以上で、任意で厚生年金保険に加入している人(ただし、健康保険料のみ対象になります)
- 複数の事業所で社会保険に加入している人
- 産前産後休業や育児休業などの期間中で、社会保険料が免除されている人
「一部の人だけ」は選べません
保険料調整制度は、事業所単位で適用されます。制度を利用する事業所では、対象となる被保険者全員が対象です。「希望する人だけ」「特定の人だけ」を選ぶことはできません。
保険料はどのくらい軽減される?
従業員の保険料の軽減割合は、標準報酬月額によって決まります。標準報酬月額が低いほど、従業員の負担割合は小さくなります。
通常の社会保険料は、会社と従業員が半分ずつ(50:50)負担します。制度を利用すると、負担割合は次の表のようになります。
| 標準報酬月額 | 報酬月額 | 利用1〜2年目の負担割合(被保険者:事業主) | 利用3年目の負担割合(被保険者:事業主) |
|---|---|---|---|
| 〜88,000円 | 93,000円未満 | 25:75 | 37.5:62.5 |
| 98,000円 | 93,000円以上101,000円未満 | 30:70 | 40:60 |
| 104,000円 | 101,000円以上107,000円未満 | 36:64 | 43:57 |
| 110,000円 | 107,000円以上114,000円未満 | 41:59 | 45.5:54.5 |
| 118,000円 | 114,000円以上122,000円未満 | 45:55 | 47.5:52.5 |
| 126,000円 | 122,000円以上130,000円未満 | 48:52 | 49:51 |
(出典:日本年金機構「保険料調整制度とは」)
表から、次の3点がわかります。
- 軽減の幅は、標準報酬月額が低い人ほど大きくなります。
- 制度の利用開始月から通算して3年目は、軽減の割合が1〜2年目の半分になります。
- 3年が過ぎると、軽減は終わります。 通常の負担割合に戻ります。
実際の保険料額の計算方法は、日本年金機構の「保険料調整制度を利用した場合の保険料額の計算方法」のページで確認できます。
会社の社会保険料負担は増える?
経営者が最も気にする点です。ここでは、次の2つを分けて考えてください。
A.短時間労働者が新たに社会保険に加入することで生じる、通常の事業主負担 これは、保険料調整制度とは別の話です。新たに加入する従業員がいれば、通常の社会保険料の会社負担分は、新たに発生します。制度に関係なく、人件費の見直しが必要になる場合があります。
B.保険料調整制度を利用したときの、一時的な追加負担 従業員の負担を軽くする分を、会社が一時的に多く納めます。この分は、あとで会社に還付されます。
日本年金機構は、Bについて「還付されるため、最終的に事業主が納付する保険料は増えない」と案内しています。ただし、これは次の条件を守った場合の話です。
- 保険料を、納付期限(翌月末)までに納めること
- 期限までに納めず、督促状で指定された期限までにも納めなかった場合、その月の追加負担分は還付されません
時系列で見る、お金の流れ
日本年金機構の例(4月から制度を利用した場合)をもとに整理します。
| 時期 | 会社がすること・起こること |
|---|---|
| 4月分の給与 | 対象の従業員全員の給与から、軽減割合にもとづく保険料を控除する |
| 5月20日ごろ | 日本年金機構から、保険料の納入告知書が届く |
| 5月末まで | 4月分の保険料を納める(従業員負担分・通常の会社負担分・軽減分の追加負担を含む) |
| 7月分の保険料 | 追加負担した分が、保険料額から差し引かれる(還付)。「保険料調整通知書」が届く |
つまり、追加負担した分は、約3カ月後の保険料から差し引かれます。その間、会社は一時的に多く納めることになるため、資金繰りの面でも確認しておくと安心です。
利用前に知っておきたい注意点
- 制度の利用を、途中でやめることはできません。 利用期間中は、標準報酬月額に応じた事業主の追加負担を必ず行う必要があります。
- 申し出た月からさかのぼって利用することはできません。
- 制度の利用が自動的に停止される場合があります(次の章で説明します)。
保険料調整制度を利用する場合の手続き
制度を利用するには、事業主が申出期限内に「保険料調整開始申出書」を提出する必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 事業主 |
| 何を | 保険料調整開始申出書を提出する(添付書類は不要) |
| いつまでに | 利用できるようになった日から2年が過ぎた日が属する月の前月まで |
| どこへ | 事務センターまたは管轄の年金事務所 |
| どうやって | 郵送または窓口への持参 |
| 届書の様式 | 日本年金機構のページでは、2026年10月に掲載予定とされている |
申出期限の例:2026年10月中に任意特定適用事業所になった事業所は、2028年9月末までに申出書を出す必要があります。
利用開始月は、申出書が受け付けられた日が属する月です。期限内であれば遅く出してもよいわけではなく、遅くなった分の軽減はさかのぼれません。利用したい場合は、早めの準備が大切です。
利用が自動で止まる場合
申出期限内に、対象となる被保険者が0人になった場合、その月から制度の利用が自動的に停止されます。停止していた期間は、通算3年の利用期間から除かれます。
再開したい場合は、事業主が申出期限内に「保険料調整停止解除申出書」を提出します。
日ごろの届出も大切です
制度の対象者の確認や、軽減額の計算に影響するため、日本年金機構は次の届出を迅速に、正確に出すよう呼びかけています。
- 被保険者資格取得届
- 被保険者資格喪失届
- 被保険者報酬月額変更届
企業が2026年10月までに確認しておきたいこと
制度が始まる10月1日を前に、次のチェックリストで自社の状況を確認してみましょう。
事業所について
- 厚生年金保険の被保険者数(短時間労働者を除く)は何人か
- すでに特定適用事業所になっていないか(なっている場合、保険料調整制度は対象外)
- 従業員が50人以下の場合、任意特定適用事業所になる予定はあるか
- 任意特定適用事業所になる場合、労使の合意はできているか
- 自社が、2027年10月以降の適用拡大で対象になる規模か(36〜50人、21〜35人など)
従業員について
- 週の所定労働時間が20時間以上の短時間労働者は何人いるか
- その中に、新たに社会保険に加入する人はいるか
- 標準報酬月額が12.6万円以下になる見込みの人は誰か
- 対象外になる人(複数の事業所で加入している人、育児休業中の人、70歳以上の人など)はいるか
お金と手続きについて
- 新たな加入による、通常の会社負担分の増加額を試算したか
- 制度を利用する場合、一時的な追加負担と、還付までの資金繰りを確認したか
- 制度は3年間途中でやめられないことを理解したうえで、利用を判断したか
- 申出期限をいつまでとして管理するか決めたか
- 給与計算で、軽減割合にもとづく保険料の控除ができる体制になっているか
- 資格取得届・喪失届・報酬月額変更届を、遅れず出せる体制になっているか
従業員への説明について
- 対象になる従業員に、社会保険に加入することと、保険料が変わることを説明したか
- 制度は事業所単位で適用され、一部の人だけを選べないことを社内で共有したか
よくある質問(FAQ)
Q1.パートを雇っていれば、どの会社でも保険料調整制度を利用できますか?
いいえ、条件があります。事業所が「対象となる事業所」に当てはまり、さらに従業員が「対象となる被保険者」に当てはまる必要があります。パートを雇っていることだけでは、対象になりません。
Q2.従業員が51人以上の会社は対象ですか?
2026年10月1日の時点で、すでに特定適用事業所になっている事業所は対象外です。また、対象となる条件に当てはまる前に、被保険者数が常時51人以上になった事業所も対象外です。自社の判断に迷う場合は、専門家にご確認ください。
Q3.会社の負担は増えますか?
「新たな加入による通常の会社負担」と「制度による一時的な追加負担」は別に考える必要があります。前者は、新たに加入する従業員が増えれば発生します。後者は、日本年金機構によると還付される仕組みで、最終的に納付する保険料は増えないとされています。ただし、納付期限までに保険料を納めないと還付されません。
Q4.対象の従業員のうち、希望する人だけに制度を使えますか?
できません。制度は事業所単位で適用されるため、その事業所の対象となる被保険者全員が対象です。
Q5.始めた後で、やめたくなったらやめられますか?
事業主からの申出でやめることはできません。利用期間中は、標準報酬月額に応じた事業主の追加負担を行う必要があります。利用を申し出る前に、負担の見込みを確認しておくことが大切です。
まとめ:まず「自社の対象者」を確認しましょう
- 保険料調整制度は、2026年10月1日に始まります。
- 対象は、事業所の条件と従業員の条件の両方を満たす場合です。パート・アルバイトなら誰でも、どの会社でも、というわけではありません。
- 会社は、軽減分を一時的に多く納め、約3カ月後に還付を受けます。納付期限を守らないと、還付されません。
- 利用するには、申出期限までに保険料調整開始申出書を提出する必要があります。申し出た後は、途中でやめられません。
- 自社が対象かどうかは、被保険者数・従業員の勤務時間・標準報酬月額を当てはめて確認する必要があります。
制度の名前を知っただけでは、自社が対象かどうかはわかりません。まずは、社会保険に加入している人数と、週20時間以上働くパート・アルバイトの人数を書き出してみてください。
あわせて読みたい
参考にした公的情報(いずれも日本年金機構、2026年9月11日更新分)
- 保険料調整制度のご案内:https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/hokenryochosei.html
- 保険料調整制度とは:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hokenryochosei/gaiyo.html
- 保険料調整制度の対象となる事業所・申出期限:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hokenryochosei/jigyosho.html
- 保険料調整制度の対象となる被保険者:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hokenryochosei/hihokensha.html
- 事業主が追加負担した保険料(保険料軽減額)の還付:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hokenryochosei/kanpu.html
- 保険料調整制度の開始申出の手続き:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hokenryochosei/kaishi.html
- 保険料調整制度の自動停止・停止解除(再開)申出の手続き:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hokenryochosei/teishi.html
- 賃金要件・企業規模要件の見直し:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
自社が対象かどうか、確認したい方へ
「うちの会社は対象になるのか」「制度を利用したほうがよいのか」「従業員にどう説明すればよいのか」。こうした点は、事業所の規模や従業員の働き方によって答えが変わります。
当事務所では、次のようなご相談をお受けしています。
- 自社が保険料調整制度の対象事業所かどうかの確認
- 対象になりそうな従業員の洗い出し
- 社会保険の適用拡大への対応と、会社負担の見通し
- 保険料調整開始申出書などの手続き
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